***六年後***
汗が額から吹き出していた。十二月だと言うのに、コートの下は汗でべたついていた。
俺は車を降りると、日本武道館のゲートの前まで走ったが、ライブは既に始まっていてもう終わる頃だった。必死に仕事を終わらして、何とか武道館にたどり着いたが、やっぱり遅かったようだ。ライブは終了したようで、観客がゲートから沢山出てくる所だった。
あれだけ灯と約束したのに、結局また約束を守る事が出来なかった。いつのまにか守れない約束ばかりが増えていき、今回は流石にまずいと感じていた。灯も絶対に激怒するはずだと思った。見上げると、大きなポスターが貼ってあった。そのポスターの真ん中に風太が大きく写っていて、その隣には飯田がいた。
今日は、風太と飯田のバンドの初めての日本武道館のライブだった─────
大学を卒業してから二年が経っていた。風太と飯田のバンドは、インディーズからメジャーデビューをして、ドラマ主題歌になった曲が直ぐに爆発的なヒットを飛ばした。
あれよあれよと言う間に、人気バンドとなり日本武道館でライブが出来るまでになっていた。
灯はクラシックからジャズに専攻を替えて、大学在学中に一年の海外留学を経て、今は国内外でジャズピアニストとして活躍しながら、ピアノ講師もしていた。
俺は、大学卒業時に父が亡くなり、卒業と共に本格的に父の会社に入り、それこそ死に物狂いで働いていた。海外展開を始めた事で、海外へ行く事も多くなり、日本でいる時間も減っていた。しかし業績は右肩上がりで、特に俺は資源の限られているこの世界で、どのように豊かに暮らしていけるかという事に興味を持ち、個人で手軽に中古品を売買出来るような携帯サイトを立ち上げて、それに火がついた所だった。
俺と灯はお互いに多忙を極めていて、会える頻度も少なくなっていた。
俺は安いアパートから、東京の夜景を一望出来るような高級マンションに引っ越して、灯に一緒に住むように言っていたが、灯は頑なに俺と一緒に住む事はせずに、大学時代からすんでいた、防音の狭いマンションに住んでいた。
今回のライブは半年以上前から灯に予定を空けておいてと言われていたライブだった。
高校時代に、文化祭で一緒に演奏した仲間がこんな大きな場所でライブをする。夢みたいな出来事だった。俺も勿論嬉しかったし、灯の喜びようは尋常じゃなかった。
『今回だけは絶対にドタキャンは許さない』
灯はそう言っていたが、見事に緊急の仕事が入り、ドタキャンしてしまった。そろそろ本当に愛想をつかされるかもしれないと俺は思っていた。
汗が額から吹き出していた。十二月だと言うのに、コートの下は汗でべたついていた。
俺は車を降りると、日本武道館のゲートの前まで走ったが、ライブは既に始まっていてもう終わる頃だった。必死に仕事を終わらして、何とか武道館にたどり着いたが、やっぱり遅かったようだ。ライブは終了したようで、観客がゲートから沢山出てくる所だった。
あれだけ灯と約束したのに、結局また約束を守る事が出来なかった。いつのまにか守れない約束ばかりが増えていき、今回は流石にまずいと感じていた。灯も絶対に激怒するはずだと思った。見上げると、大きなポスターが貼ってあった。そのポスターの真ん中に風太が大きく写っていて、その隣には飯田がいた。
今日は、風太と飯田のバンドの初めての日本武道館のライブだった─────
大学を卒業してから二年が経っていた。風太と飯田のバンドは、インディーズからメジャーデビューをして、ドラマ主題歌になった曲が直ぐに爆発的なヒットを飛ばした。
あれよあれよと言う間に、人気バンドとなり日本武道館でライブが出来るまでになっていた。
灯はクラシックからジャズに専攻を替えて、大学在学中に一年の海外留学を経て、今は国内外でジャズピアニストとして活躍しながら、ピアノ講師もしていた。
俺は、大学卒業時に父が亡くなり、卒業と共に本格的に父の会社に入り、それこそ死に物狂いで働いていた。海外展開を始めた事で、海外へ行く事も多くなり、日本でいる時間も減っていた。しかし業績は右肩上がりで、特に俺は資源の限られているこの世界で、どのように豊かに暮らしていけるかという事に興味を持ち、個人で手軽に中古品を売買出来るような携帯サイトを立ち上げて、それに火がついた所だった。
俺と灯はお互いに多忙を極めていて、会える頻度も少なくなっていた。
俺は安いアパートから、東京の夜景を一望出来るような高級マンションに引っ越して、灯に一緒に住むように言っていたが、灯は頑なに俺と一緒に住む事はせずに、大学時代からすんでいた、防音の狭いマンションに住んでいた。
今回のライブは半年以上前から灯に予定を空けておいてと言われていたライブだった。
高校時代に、文化祭で一緒に演奏した仲間がこんな大きな場所でライブをする。夢みたいな出来事だった。俺も勿論嬉しかったし、灯の喜びようは尋常じゃなかった。
『今回だけは絶対にドタキャンは許さない』
灯はそう言っていたが、見事に緊急の仕事が入り、ドタキャンしてしまった。そろそろ本当に愛想をつかされるかもしれないと俺は思っていた。



