「灯、どう?大学楽しい?」
灯は俺の質問に少し悩んでいた。
「う〜ん。音楽について勉強するのは嫌じゃないけど、やっぱり私はピアノにそこまでのめり込めない気がするな」
「でも、選ばれたんだろ?学内演奏会のピアノ」
「うん。風ちゃんも選ばれたよ。やっぱり風ちゃんは凄いね。こっちでバンドメンバー見つけて飯田君とバンド組んでバンド活動も順調だし。あっ新しいバンドで、またライブやるらしいよ」
飯田は、大学には進学せずに東京に上京して飲食店で働きながらバンド活動をしていた。
飯田は本気でメジャーデビューを狙っているが、風太はどういう気持ちでバンドをやっているかはわからなかった。
「凄いな、あの二人。一緒に行くか?ライブ」
「うん!行きたい!楽しみだなぁ!佳月はすっかり仕事にのめり込んでるね」
灯が少し寂しそうに言った。
「俺、父さんが苦労した会社をちゃんと守っていきたいし、もっと大きくしたいんだよ。ただのリサイクルショップじゃなくて、更に大きな展開が出来る気がするんだ。ネット社会だしね、これからは店舗だけに拘らず色々な形態がとれるようになると思うんだ」
車のクラクションの音が遠くで鳴っていた。
ふと空を見上げると綺麗な夜景が見えたが、田舎で見ていたような大きな夜空は見る事が出来なかった。
「佳月は自分が行く道を見つけたんだね、羨ましいな。私は結局、まだ父親の描いた人生をなぞっているだけだもん」
「それでも、俺は灯のピアノが世界で一番好きだし。灯のピアノは沢山の人を救う力があると思うよ」
俺は本当にそう思っていた。灯がどんなに、ピアノにのめり込めなくても、灯のピアノを聴いた人間は、皆んな灯のピアノに魅せられて惹きつけられる。けれど、灯は自分のピアノを腕を周りに認められる程、何故か窮屈そうに感じていた。
「ありがとう。なんか東京は窮屈だなぁ。私はやっぱり地元の方が好き。阿武隈川がみたいなぁ!佳月、夏休みは帰る?お盆の花火大会一緒に行きたいな」
俺は、そう言われたけれど、直ぐに返事が出来なかった。夏休み中は時間があるので、西島さんから本社での仕事を色々教わる事になっていた。父の病状の進行が思ったより早いので、西島さんも焦っていた。
「ごめん、、、帰れるかわからない。けど、一緒に遊べる時間は絶対に作るから。俺も、灯と一緒に遊びたいし」
灯は残念そうな顔を一つもせずに言った。
「人生の中で、頑張らなきゃいけない時ってあるんだよ。佳月は今その時の中にいるんじゃない?頑張って!今年は佳月ママと花火大会に行くから」
「え?お袋と?」
「うん。今年は休みとるんだって。だから、二人で浴衣着て行ってくるから。佳月は馬車馬のように働いていいよ!」
灯は、俺がどんなに忙しくて時間が取れなくても、文句を言わなかった。
"寂しい"の一言も言った事がなかった。物分かりの良い彼女として、俺の前で無理していたのかもしれないが、灯は心から俺のやりたい事を応援してくれていた。それに甘えてはいけないと思いつつ、とにかく時間がなかった。
何倍速で時計の針が進むように、どんどん時間は過ぎていった。
灯は俺の質問に少し悩んでいた。
「う〜ん。音楽について勉強するのは嫌じゃないけど、やっぱり私はピアノにそこまでのめり込めない気がするな」
「でも、選ばれたんだろ?学内演奏会のピアノ」
「うん。風ちゃんも選ばれたよ。やっぱり風ちゃんは凄いね。こっちでバンドメンバー見つけて飯田君とバンド組んでバンド活動も順調だし。あっ新しいバンドで、またライブやるらしいよ」
飯田は、大学には進学せずに東京に上京して飲食店で働きながらバンド活動をしていた。
飯田は本気でメジャーデビューを狙っているが、風太はどういう気持ちでバンドをやっているかはわからなかった。
「凄いな、あの二人。一緒に行くか?ライブ」
「うん!行きたい!楽しみだなぁ!佳月はすっかり仕事にのめり込んでるね」
灯が少し寂しそうに言った。
「俺、父さんが苦労した会社をちゃんと守っていきたいし、もっと大きくしたいんだよ。ただのリサイクルショップじゃなくて、更に大きな展開が出来る気がするんだ。ネット社会だしね、これからは店舗だけに拘らず色々な形態がとれるようになると思うんだ」
車のクラクションの音が遠くで鳴っていた。
ふと空を見上げると綺麗な夜景が見えたが、田舎で見ていたような大きな夜空は見る事が出来なかった。
「佳月は自分が行く道を見つけたんだね、羨ましいな。私は結局、まだ父親の描いた人生をなぞっているだけだもん」
「それでも、俺は灯のピアノが世界で一番好きだし。灯のピアノは沢山の人を救う力があると思うよ」
俺は本当にそう思っていた。灯がどんなに、ピアノにのめり込めなくても、灯のピアノを聴いた人間は、皆んな灯のピアノに魅せられて惹きつけられる。けれど、灯は自分のピアノを腕を周りに認められる程、何故か窮屈そうに感じていた。
「ありがとう。なんか東京は窮屈だなぁ。私はやっぱり地元の方が好き。阿武隈川がみたいなぁ!佳月、夏休みは帰る?お盆の花火大会一緒に行きたいな」
俺は、そう言われたけれど、直ぐに返事が出来なかった。夏休み中は時間があるので、西島さんから本社での仕事を色々教わる事になっていた。父の病状の進行が思ったより早いので、西島さんも焦っていた。
「ごめん、、、帰れるかわからない。けど、一緒に遊べる時間は絶対に作るから。俺も、灯と一緒に遊びたいし」
灯は残念そうな顔を一つもせずに言った。
「人生の中で、頑張らなきゃいけない時ってあるんだよ。佳月は今その時の中にいるんじゃない?頑張って!今年は佳月ママと花火大会に行くから」
「え?お袋と?」
「うん。今年は休みとるんだって。だから、二人で浴衣着て行ってくるから。佳月は馬車馬のように働いていいよ!」
灯は、俺がどんなに忙しくて時間が取れなくても、文句を言わなかった。
"寂しい"の一言も言った事がなかった。物分かりの良い彼女として、俺の前で無理していたのかもしれないが、灯は心から俺のやりたい事を応援してくれていた。それに甘えてはいけないと思いつつ、とにかく時間がなかった。
何倍速で時計の針が進むように、どんどん時間は過ぎていった。



