***喫茶店『Memories』***
「えー!なんでわざわざ東京?別に大学へ進学したいなら仙台でもいいじゃない」
祖父の喫茶店で、俺は母と夕飯のカレーを食べていた。いつもの何て事のない日常だが、いつもと違うのは母が俺が持ち帰ってきた進路調査表を見て、希望の大学全てが東京である事に怒りを表した事だ。
高校三年生の春になり、いよいよ受験モードに突入して、何処の大学を受けるか親と話し合いをしてから三者面談にのぞめと、担任教師から口を酸っぱくして言われていた。
来週に迫った三者面談の席で、親子喧嘩だけはしてくれるなという担任からの願いだろう。
「なんで今も東北にいるのに、更に北に北上しなくちゃいけないんだよ」
「佳月知ってる?仙台ってここより物凄く都会なんだから」
「知ってるよ。先週も風太達のライブを見に、仙台のライブハウスに行ってきただろ」
「じゃあ、仙台でもいいじゃない。大学いっぱいあるし、学校の子達だって仙台行く子多いでしょ?」
母はちっとも引く意志はないという感じで俺に捲し立てる。確かに学校の進学先で一番多いのは、今の住んでいるここからも電車で通える仙台の大学だった。
けれど俺は仙台へ行くつもりはなかった。
俺は生まれた時からここで育って、この町の事は嫌いではなかったが、何処か息苦しい閉塞感を感じていた。
いつか絶対にこの町からでて、大きな世界に出て見たい。それは仙台ではなく、やっぱり東京だと思っていた。勿論、ここまで一人で俺を育ててくれた母や、祖父を残して行く事に罪悪感はあったが、それ以上に東京へ行きたい気持ちの方が大きかった。
このままだと、三者面談で大喧嘩をする、もっとも担任が嫌がる親子になる事は避けられそうもなかった。何も言わずにカップを拭いている祖父の顔を見つめると、祖父は俺に向かって少し微笑むと母に言った。
「息子がでかい所へ出て勝負したいと言ってるんだ、したいようにさせてやれ」
祖父が俺の肩を持つと、母は余計に怒りを加速させた。
「お父さんは本当にいつも佳月の味方をするんだから。あーはいはい!結局実の娘より産んでもいない孫の方が可愛いって事よね!」
じいちゃんは別に母も産んではいないと思うが、母はたまに俺と兄妹のような気分になって俺に嫉妬してくる時があった。
「何か前から東京を毛嫌いしてるけど、お袋は東京になんか嫌な思い出でもあるわけ?」
母は昔から東京に対して拒絶反応があった。テレビで美味しそうな東京のお店を見ても『見た目だけは一丁前で味は大味ね』と食べた事もないのに悪態をついたし、東京で事件が起きると
『物騒だわ、、、人口が多すぎるから何処に凶悪犯が潜んでるかわかりゃしない』と大袈裟な事を言っていた。しかし俺が聞いても、お袋は何でもないようにはぐらかす。
「別に?そういうわけじゃないけど?で?灯ちゃんは何て言ってるの?」
やっぱりはぐらかして、話題を変えてくる。
「灯?灯は別に何にも言ってないけど?」
「一緒に東京の大学行くって?」
「さぁ?第一、灯は大学に行くとも言ってなかったけど?なんか進路の事を聞く度にコロコロ話しが変わるから、さっぱりよくわかんない。この間は、パティシエになるって言ってたし、その前は地震を予測するよくわからない機関で働くとか言ってたし」
祖父も母も灯らしい話しなので思わず笑っていた。灯と付き合ってから一年以上が経っていたが、付き合う前から灯は変わらずに、何処か変わっていて、今だに掴めない所があった。
「えー!なんでわざわざ東京?別に大学へ進学したいなら仙台でもいいじゃない」
祖父の喫茶店で、俺は母と夕飯のカレーを食べていた。いつもの何て事のない日常だが、いつもと違うのは母が俺が持ち帰ってきた進路調査表を見て、希望の大学全てが東京である事に怒りを表した事だ。
高校三年生の春になり、いよいよ受験モードに突入して、何処の大学を受けるか親と話し合いをしてから三者面談にのぞめと、担任教師から口を酸っぱくして言われていた。
来週に迫った三者面談の席で、親子喧嘩だけはしてくれるなという担任からの願いだろう。
「なんで今も東北にいるのに、更に北に北上しなくちゃいけないんだよ」
「佳月知ってる?仙台ってここより物凄く都会なんだから」
「知ってるよ。先週も風太達のライブを見に、仙台のライブハウスに行ってきただろ」
「じゃあ、仙台でもいいじゃない。大学いっぱいあるし、学校の子達だって仙台行く子多いでしょ?」
母はちっとも引く意志はないという感じで俺に捲し立てる。確かに学校の進学先で一番多いのは、今の住んでいるここからも電車で通える仙台の大学だった。
けれど俺は仙台へ行くつもりはなかった。
俺は生まれた時からここで育って、この町の事は嫌いではなかったが、何処か息苦しい閉塞感を感じていた。
いつか絶対にこの町からでて、大きな世界に出て見たい。それは仙台ではなく、やっぱり東京だと思っていた。勿論、ここまで一人で俺を育ててくれた母や、祖父を残して行く事に罪悪感はあったが、それ以上に東京へ行きたい気持ちの方が大きかった。
このままだと、三者面談で大喧嘩をする、もっとも担任が嫌がる親子になる事は避けられそうもなかった。何も言わずにカップを拭いている祖父の顔を見つめると、祖父は俺に向かって少し微笑むと母に言った。
「息子がでかい所へ出て勝負したいと言ってるんだ、したいようにさせてやれ」
祖父が俺の肩を持つと、母は余計に怒りを加速させた。
「お父さんは本当にいつも佳月の味方をするんだから。あーはいはい!結局実の娘より産んでもいない孫の方が可愛いって事よね!」
じいちゃんは別に母も産んではいないと思うが、母はたまに俺と兄妹のような気分になって俺に嫉妬してくる時があった。
「何か前から東京を毛嫌いしてるけど、お袋は東京になんか嫌な思い出でもあるわけ?」
母は昔から東京に対して拒絶反応があった。テレビで美味しそうな東京のお店を見ても『見た目だけは一丁前で味は大味ね』と食べた事もないのに悪態をついたし、東京で事件が起きると
『物騒だわ、、、人口が多すぎるから何処に凶悪犯が潜んでるかわかりゃしない』と大袈裟な事を言っていた。しかし俺が聞いても、お袋は何でもないようにはぐらかす。
「別に?そういうわけじゃないけど?で?灯ちゃんは何て言ってるの?」
やっぱりはぐらかして、話題を変えてくる。
「灯?灯は別に何にも言ってないけど?」
「一緒に東京の大学行くって?」
「さぁ?第一、灯は大学に行くとも言ってなかったけど?なんか進路の事を聞く度にコロコロ話しが変わるから、さっぱりよくわかんない。この間は、パティシエになるって言ってたし、その前は地震を予測するよくわからない機関で働くとか言ってたし」
祖父も母も灯らしい話しなので思わず笑っていた。灯と付き合ってから一年以上が経っていたが、付き合う前から灯は変わらずに、何処か変わっていて、今だに掴めない所があった。



