アーリータイムズ

 俺と、水上と涼太はそのチラシに注目した。
内容を見ると、今度の週末に行われるバンドのタイバンのチラシだった。

 「俺達のバンド、やっとライブハウスで演奏出来る事になったんだよ!アマチュアデビューだよ!!」

飯田がそう言うと、俺達は盛り上がった。

 「えー!!!凄い凄い!!ライブハウスでやるの!?おめでとう!!!」

「このライブハウス、仙台だろ?凄いな!」

俺達は自分の事のように嬉しかった。まさかあの文化祭のライブがきっかけで、二は人がバンドデビューするなんて、夢にも思っていなかった。

 「今から緊張するよ!俺ダイエットしてるんだよ、ちょっと痩せただろ?」

風太がそう言うと、確かにお腹周りがほっそりしていた。

 「えー風ちゃん痩せちゃうの?ちょっとぷにょってる方がいいのになぁ!」

水上がいい加減な事を言うが、元々長身の風太が痩せたら、確かにかっこよくなるかもしれないと思った。

 「なぁ、水上達見にきてくれるだろ?」

飯田が俺と水上に言った。水上はすかさず直ぐに返事をしていた。

 「行きます!絶対行くよそれは!成瀬君も行くでしょ?」

俺はそう聞かれて黙ってしまった。これだと、俺達二人で仙台に行く事になるだろう。この話しをしたら、きっと茜先輩は嫌がるんじゃないかと思った。俺の表情で何かを感じとった涼太が言った。

 「流石に、茜先輩がいるのに他の子と仙台行くのはまずいか。俺が行くよ!」

「でも、風ちゃん達のデビューだよ?ダメなの?」

水上が、少し怒ったような顔をした。けれど、俺はこの話しをした時の茜先輩の反応が予想出来た。一緒のバスで帰る事も嫌がっているのに、休みの日に出かけるなんて、絶対に納得しないだろう。

 「ごめん、彼女に嫌な思いさせたくない」

 正直に言うと、水上は怒った顔から少し悲しそうな顔になって、大きな切れ長の目を伏目がちにして、古いテーブルの上を捉えていた。
空気が少し悪くなったので、風太がわざと明るい声を出して、水上の肩をたたいた。

 「ほらっ!灯、涼太君と来なよ!早めにきて最前列で盛り上げてもらわないと困るよ。俺達の番になって客が一人もいなくなったら困るだろ?」

 涼太の言葉に、顔を上げて水上は気持ちを切り替えるように笑った。

「そうだね。成瀬君の分も私が盛り上げてあげるよ!じゃあ涼太君、一緒に行こう!」

「もちろん。楽しみだなぁ!俺文化祭で聞いてから風太の歌声のファンだからなぁ」

 その後も、二人のバンド活動の話しで盛り上がった。本音を言えば俺もライブへ行きたかった。きっと楽しいに決まってるし、二人の演奏も聞いてみたかった。
 誰かと付き合うという事は、二人だけの独自のルールが出来て、二人の関係を続ける為には何かを我慢して、恋人の気持ちを優先しなければならない物だと気づいた。
 恋人より大切にしなければならないものなんてない。俺はそう思いこんでいた。