アーリータイムズ

 涼太も打ち上げに、参加する事になって皆んなで喫茶店に向かった。祖父が今日はカツサンドを大量に作ってくれていた。久しぶりに水上が喫茶店に来て、祖父は大喜びで、母まで呼んでしまった。
 皆んなでトランプをして盛り上がっている時
、水上は祖父を手伝って食器を拭いていた。

 「水上、ありがとう。変わるよ、トランプ混ざってくれば?」

俺が声をかけると、水上が食器を拭く手を止めた。

 「そうだね。でも涼太君が強過ぎて全然勝てなくてつまんないんだよ」

「確かに、昔から涼太はトランプ得意なんだよ。なぁ、顔大丈夫?」

俺は、水上の赤紫になった頬を指差した。

 「大丈夫。コンクール出ないって抜け出したら、父親に思いっきり平手打ちされたの。信じられないよ、娘の顔にこんな痣つくるかな」

見ているだけで、痛々しかった。水上は水上で、学校に来ない間、俺達の知らない所で父親と戦っていたみたいだった。

 「、、、なぁ、水上ずっと謝りたかったんだ。花火大会の日の事」

水上は、拭いていた食器を見つめていた。何となく、二人の間に気まずい空気が流れた。しばらく黙っていた水上が俺の方を見た。

 「いつの時代の話ししてんの?全部忘れたよ。まあ、色々あって私もヤケクソモードになって、セカンドシーズンに入ったって感じ?」

「全く意味わかんないんだけど、、、」

  「とにかく、茜先輩と付き合えたんだね。おめでとう。私も成瀬君の夢を叶えるアシストが出来たなら幸いだよ。末永く幸せにね」

水上は笑顔でそれだけ言うと、布巾を俺に渡して皆んなの所へ行ってしまった。残された俺の隣に、水上とのやり取りを見ていた祖父が食器を持ってやってきた。

 「佳月、間違う事は馬鹿じゃない。間違った事に気づかない奴が馬鹿なんだぞ」

「は、、、?なんだよ、じいちゃん。どういう意味?」

 「逃した魚の大きさに、いつか気づく日がくるだろう」

祖父がそう言った時、水槽の金魚がポチャっと跳ねた。