水上は、真顔で舞台の中央にくると、風太の前に置いてあったマイクスタンドから、マイクを取った。水上の顔を見るとまるで殴られたように、左顔の口から頬にかけて、紫色の痣が出来ていた。
水上の登場で、少し場の雰囲気が変わった。
止めに入ろうとした、教師達も一瞬止まっていた。俺は思わず水上に聞いた。
「お前、その痣どうしたの?」水上は質問に答えずにマイクを持つと、一度深呼吸をして
「うっっっるさ────────い!!!」
と叫んだ。
近くにいた俺は、本気で鼓膜が破れるかと思った。頭をつん裂くような、馬鹿でかい声だった。
しかし、その声のせいで、会場中が呆気にとられ、ブーイングが止み、ポップコーンを投げつけていたやつらも止まった。
水上はそのまま、ポップコーンの散らばった舞台を歩き、キーボードではなく、ピアノの椅子に座った。
体育館にいた人間全員が、何も言えず水上の行動を見つめていた。勿論バンドのメンバーも面食らってその場で固まっていた。
水上はピアノの上に手を置くと、また大きな声で叫んだ。
「風ちゃん、歌って!!!!」
えっ、、、?
風太もいきなり名前を呼ばれてびびっていたが、水上はいきなりピアノを弾きだした。
それは、初めて聴く水上のクラシックピアノだった、、、、。
物凄い、力強く、圧倒的な迫力で弾き出したその曲は、、、
「"魔王"だ、、、」
風太が隣りで呟いた。
シューベルトの"魔王"は、音楽の授業で習ったから俺でも、知っていた。水上は物凄い速さで鍵盤を連打して指を走らせながら弾いていた。
皆んなが息を呑んで、水上のピアノを聴いていた。そして前奏が終わる頃、風太に目で合図をした。風太がそれに答えるように一度頷いて、流暢なドイツ語でピアノに合わせて歌い出した。
マイクなしでも圧巻の声量だった。頭を突き抜けるような綺麗な高音と、重厚感のある、よく伸びる低音は、聴いているだけで鳥肌がたった。
風太は語り部と、魔王、父と息子を完璧に演じ分けるように、圧倒的な表現力で歌っていた。水上の神がかかった演奏と、風太の素晴らしい歌声で、クラシックなんてわからなくても、会場中が呼吸を忘れるくらいに感動していた。もはや、お金を払って聴くようなプロの演奏だった。
演奏が終わると、自然とパラパラと拍手がなり、最終的には大きな拍手へと変わって行った。
感動して、涙ぐんでいる生徒も多かった。
練習もしないで、これだけの演奏が出来るなんて、二人とも化け物としか思えなかった。
水上は、立ち上がるとまた一礼してマイクを握った。
「今のは前座です!これから本番行きます!」
(いや、逆だろ!!)
俺は思わず突っ込みたくなった。バンドのメンバーも、水上と風太の演奏に聞き惚れていたが、本番と言われて急に我に返った。
静まり返った会場で、水上がまた大声で叫んだ。
「ドラム────!!!いくよ!ハイッ!ワン、ツー、スリー!!」
水上の掛け声で、飯田が慌ててドラムを叩き出した。続けて皆んなも演奏しだす。体育館の中に脳みそを突き抜けるような爆音が流れだす。
水上は、新しく編曲してから一度も一緒に演奏をしていなかったが、そんな事が嘘のように完璧に演奏していた。"魔王"の時とは変わって、楽しく軽やかにキーボードを弾いていた。
演奏なんて出来ないと思っていたが、さっきと打って変わって、会場中が夢中になって俺達の奏でる音楽にノッていた。演奏も良かったが、やっぱり風太の歌声に皆んな驚いていた。
天を突き抜けるような、気持ちのいい高音はずっと聴いていたいような声だったし、低音は包み混むように心地の良い、それに加えてかっこいい歌声をしていた。そして、飯田のドラムソロでも、会場が沸いた。
あれだけブーイングが起きていたのに、今は"陰キャ"が奏でる音楽に観客が夢中になって歓声をあげていた。
不良グループのやつらも、悔しそうな顔をして眺めていたし、飯田はこれで少し反逆出来たんじゃないだろうか、、、?
俺は、楽しそうにキーボードを弾く水上を横目で見ながら思った。
本当に凄い、、、。こいつは本当に凄いよ。
俺にない全てを持っていると思った。
水上の登場で、少し場の雰囲気が変わった。
止めに入ろうとした、教師達も一瞬止まっていた。俺は思わず水上に聞いた。
「お前、その痣どうしたの?」水上は質問に答えずにマイクを持つと、一度深呼吸をして
「うっっっるさ────────い!!!」
と叫んだ。
近くにいた俺は、本気で鼓膜が破れるかと思った。頭をつん裂くような、馬鹿でかい声だった。
しかし、その声のせいで、会場中が呆気にとられ、ブーイングが止み、ポップコーンを投げつけていたやつらも止まった。
水上はそのまま、ポップコーンの散らばった舞台を歩き、キーボードではなく、ピアノの椅子に座った。
体育館にいた人間全員が、何も言えず水上の行動を見つめていた。勿論バンドのメンバーも面食らってその場で固まっていた。
水上はピアノの上に手を置くと、また大きな声で叫んだ。
「風ちゃん、歌って!!!!」
えっ、、、?
風太もいきなり名前を呼ばれてびびっていたが、水上はいきなりピアノを弾きだした。
それは、初めて聴く水上のクラシックピアノだった、、、、。
物凄い、力強く、圧倒的な迫力で弾き出したその曲は、、、
「"魔王"だ、、、」
風太が隣りで呟いた。
シューベルトの"魔王"は、音楽の授業で習ったから俺でも、知っていた。水上は物凄い速さで鍵盤を連打して指を走らせながら弾いていた。
皆んなが息を呑んで、水上のピアノを聴いていた。そして前奏が終わる頃、風太に目で合図をした。風太がそれに答えるように一度頷いて、流暢なドイツ語でピアノに合わせて歌い出した。
マイクなしでも圧巻の声量だった。頭を突き抜けるような綺麗な高音と、重厚感のある、よく伸びる低音は、聴いているだけで鳥肌がたった。
風太は語り部と、魔王、父と息子を完璧に演じ分けるように、圧倒的な表現力で歌っていた。水上の神がかかった演奏と、風太の素晴らしい歌声で、クラシックなんてわからなくても、会場中が呼吸を忘れるくらいに感動していた。もはや、お金を払って聴くようなプロの演奏だった。
演奏が終わると、自然とパラパラと拍手がなり、最終的には大きな拍手へと変わって行った。
感動して、涙ぐんでいる生徒も多かった。
練習もしないで、これだけの演奏が出来るなんて、二人とも化け物としか思えなかった。
水上は、立ち上がるとまた一礼してマイクを握った。
「今のは前座です!これから本番行きます!」
(いや、逆だろ!!)
俺は思わず突っ込みたくなった。バンドのメンバーも、水上と風太の演奏に聞き惚れていたが、本番と言われて急に我に返った。
静まり返った会場で、水上がまた大声で叫んだ。
「ドラム────!!!いくよ!ハイッ!ワン、ツー、スリー!!」
水上の掛け声で、飯田が慌ててドラムを叩き出した。続けて皆んなも演奏しだす。体育館の中に脳みそを突き抜けるような爆音が流れだす。
水上は、新しく編曲してから一度も一緒に演奏をしていなかったが、そんな事が嘘のように完璧に演奏していた。"魔王"の時とは変わって、楽しく軽やかにキーボードを弾いていた。
演奏なんて出来ないと思っていたが、さっきと打って変わって、会場中が夢中になって俺達の奏でる音楽にノッていた。演奏も良かったが、やっぱり風太の歌声に皆んな驚いていた。
天を突き抜けるような、気持ちのいい高音はずっと聴いていたいような声だったし、低音は包み混むように心地の良い、それに加えてかっこいい歌声をしていた。そして、飯田のドラムソロでも、会場が沸いた。
あれだけブーイングが起きていたのに、今は"陰キャ"が奏でる音楽に観客が夢中になって歓声をあげていた。
不良グループのやつらも、悔しそうな顔をして眺めていたし、飯田はこれで少し反逆出来たんじゃないだろうか、、、?
俺は、楽しそうにキーボードを弾く水上を横目で見ながら思った。
本当に凄い、、、。こいつは本当に凄いよ。
俺にない全てを持っていると思った。



