「ポイには、表と裏があるんだよ。それを交互にひっくり返して使っていくの。裏側の方が金魚が引っかかりやすいから、まずは裏側から、、、」
水上はそう言って、ポイを水に沈めた。
「狙うのは、水面の上にいる、小さなゆっくり泳いでいる金魚ね。水圧がかからないように、斜め四十度くらいで、ポイを入れて、、、」
そう言うと、いとも簡単に一匹金魚をすくってしまった。あまりにも早技で、俺はびっくりして水上の顔を見つめると、水上は真剣に次に狙う金魚を品定めしていた。
「一回濡れてるポイは破れやすいから、慎重ににね、必ず金魚の泳ぐ方向に一緒に動かす」
水上はまた手品みたいに、一瞬で金魚をすくった。
「何なの?お前プロなの?」
「だから、人生かけてるって言ったでしょ?」
「お嬢ちゃん!凄いね!」的屋のおじちゃんも、水上の早技を見て声をかけてきた。
その後もどんどん金魚をとっていき、あっという間に八匹までとっていた。周りでやっていた客も、水上があまりにも金魚をとるので、皆んな水上に注目しだした。
そして、水上の最高記録の十匹まで、到達した。
「凄いな!お前!あと一匹で最高記録だぞ」
俺もつい興奮して、水上に言うと、周りの客も興奮して水上の挑戦を見届けていた。
「やめて!いまプレッシャーに押し潰れそうだから」
水上は、何故か深呼吸をして、気合いを入れてポイを水に沈めた。ポイはもういつ破れてもおかしくないくらいに、弱くなっていた。
狙った金魚をすくおうとした時、金魚が尾びれをばたつかせ、ポイが破れた。
「あ〜、、、、」周りにいた人間、皆んなが一斉に声を出していた。水上は、俺に向かって眉間に皺を寄せて悲しそうな顔をしていた。
その顔を見たら、面白くなってきて俺は笑ってしまった。
水上は落ち込んでいたが、周りの人達は「凄かったよ」と声をかけてくれていた。的屋のおじちゃんが、五匹ずつ袋にいれて俺と、水上に渡してくれた。
「来年は新記録更新してよ!」
そう言って手を振っていたが、水上はまだ悔しそうだった。
「でも、どうする?こんな大量の金魚」
俺が袋に入ってる金魚を見つめながら言うと、水上は「マスターに言って、喫茶店で飼うことにしようよ」と言った。
祖父は昔熱帯魚を飼っていたので、喫茶店に使っていない水槽がある事を思い出した。
時刻は十九時が近くなり、もうすぐ花火が打ち上がる時間になる頃だった。
「水上、灯籠流しするか?」
俺が声をかけると、水上が何処か前方を見て、止まっていた。
「水上?聞いてる?」もう一度声をかけると、水上の視線の先に茜先輩がいた。
茜先輩は浴衣を着ていたが、側に宮田先輩はいなく、一人のようだった。
「泣いてる、、、」水上が呟いた。
茜先輩は確かに、一人でベンチに座って泣いているみたいに見えた。俺は心臓がぎゅっとして、小さく鼓動がなっていた。そのまま黙って茜先輩を見ていると、水上が口を開いた。
「行かなくていいの、、、?泣いてるよ?何かあったのかも」
そうは言っても、今日は水上と一緒に灯籠流しをして花火を見る予定だった。しかも、俺から誘って二人で来たのに、水上を置いていくのは気が引けた。それでも、俺はその場から動けなくなっていた。
「ずっと、好きだったんでしょ?行った方がいいよ」
「でも、、、」
「私は大丈夫だから。灯籠流しなら一人でも出来るよ。最初は一人で来るつもりだったし、気にしないで」
水上はそう言うが、言葉と感情がちぐはぐになっている気がした。その証拠に、水上は俺のTシャツの裾を握っていて『行かないでほしい』と言っている気がした。俺が思わずそれを見つめると、水上は慌てて俺のTシャツの裾から手を離した。水上が、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「私、りんご飴買ってくるから。じゃあね!ちゃんと気持ち伝えないと、後悔するよ」
水上は俺にそう告げると、走って行ってしまった。追いかけないといけないと、頭ではわかっていた。お姉さんの事を考えながら、一人で灯籠流しをするのは辛いだろうと思った。だから、今日一緒に行こうと誘ったんだ。
自分の気持ちがぐるぐると渦巻いて、よくわからなかった。何が正解なのか、どうしたらいいのかわからなかった。けれど、俺は水上を追いかけないで、先輩のいる方にかけていった。
水上はそう言って、ポイを水に沈めた。
「狙うのは、水面の上にいる、小さなゆっくり泳いでいる金魚ね。水圧がかからないように、斜め四十度くらいで、ポイを入れて、、、」
そう言うと、いとも簡単に一匹金魚をすくってしまった。あまりにも早技で、俺はびっくりして水上の顔を見つめると、水上は真剣に次に狙う金魚を品定めしていた。
「一回濡れてるポイは破れやすいから、慎重ににね、必ず金魚の泳ぐ方向に一緒に動かす」
水上はまた手品みたいに、一瞬で金魚をすくった。
「何なの?お前プロなの?」
「だから、人生かけてるって言ったでしょ?」
「お嬢ちゃん!凄いね!」的屋のおじちゃんも、水上の早技を見て声をかけてきた。
その後もどんどん金魚をとっていき、あっという間に八匹までとっていた。周りでやっていた客も、水上があまりにも金魚をとるので、皆んな水上に注目しだした。
そして、水上の最高記録の十匹まで、到達した。
「凄いな!お前!あと一匹で最高記録だぞ」
俺もつい興奮して、水上に言うと、周りの客も興奮して水上の挑戦を見届けていた。
「やめて!いまプレッシャーに押し潰れそうだから」
水上は、何故か深呼吸をして、気合いを入れてポイを水に沈めた。ポイはもういつ破れてもおかしくないくらいに、弱くなっていた。
狙った金魚をすくおうとした時、金魚が尾びれをばたつかせ、ポイが破れた。
「あ〜、、、、」周りにいた人間、皆んなが一斉に声を出していた。水上は、俺に向かって眉間に皺を寄せて悲しそうな顔をしていた。
その顔を見たら、面白くなってきて俺は笑ってしまった。
水上は落ち込んでいたが、周りの人達は「凄かったよ」と声をかけてくれていた。的屋のおじちゃんが、五匹ずつ袋にいれて俺と、水上に渡してくれた。
「来年は新記録更新してよ!」
そう言って手を振っていたが、水上はまだ悔しそうだった。
「でも、どうする?こんな大量の金魚」
俺が袋に入ってる金魚を見つめながら言うと、水上は「マスターに言って、喫茶店で飼うことにしようよ」と言った。
祖父は昔熱帯魚を飼っていたので、喫茶店に使っていない水槽がある事を思い出した。
時刻は十九時が近くなり、もうすぐ花火が打ち上がる時間になる頃だった。
「水上、灯籠流しするか?」
俺が声をかけると、水上が何処か前方を見て、止まっていた。
「水上?聞いてる?」もう一度声をかけると、水上の視線の先に茜先輩がいた。
茜先輩は浴衣を着ていたが、側に宮田先輩はいなく、一人のようだった。
「泣いてる、、、」水上が呟いた。
茜先輩は確かに、一人でベンチに座って泣いているみたいに見えた。俺は心臓がぎゅっとして、小さく鼓動がなっていた。そのまま黙って茜先輩を見ていると、水上が口を開いた。
「行かなくていいの、、、?泣いてるよ?何かあったのかも」
そうは言っても、今日は水上と一緒に灯籠流しをして花火を見る予定だった。しかも、俺から誘って二人で来たのに、水上を置いていくのは気が引けた。それでも、俺はその場から動けなくなっていた。
「ずっと、好きだったんでしょ?行った方がいいよ」
「でも、、、」
「私は大丈夫だから。灯籠流しなら一人でも出来るよ。最初は一人で来るつもりだったし、気にしないで」
水上はそう言うが、言葉と感情がちぐはぐになっている気がした。その証拠に、水上は俺のTシャツの裾を握っていて『行かないでほしい』と言っている気がした。俺が思わずそれを見つめると、水上は慌てて俺のTシャツの裾から手を離した。水上が、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「私、りんご飴買ってくるから。じゃあね!ちゃんと気持ち伝えないと、後悔するよ」
水上は俺にそう告げると、走って行ってしまった。追いかけないといけないと、頭ではわかっていた。お姉さんの事を考えながら、一人で灯籠流しをするのは辛いだろうと思った。だから、今日一緒に行こうと誘ったんだ。
自分の気持ちがぐるぐると渦巻いて、よくわからなかった。何が正解なのか、どうしたらいいのかわからなかった。けれど、俺は水上を追いかけないで、先輩のいる方にかけていった。



