合宿から帰って家に荷物を置くと、俺は夕飯を食べに祖父の喫茶店に行った。
中へ入ると、祖父が俺に声をかけてきた。
「おー!佳月、夕飯ちょっと待て、さっきまで珍しく客が立て込んでたんだよ。今オムライス作るから。そうだ!外のテラスに灯ちゃんもいるから、夕飯食べて帰るようにいってくれ」
「え?水上きてるの?」
「ああ、さっきまで何曲か弾いてくれたよ。忙しかったから、ホールまで手伝ってくれたよ」
俺はそれを聞いて慌てて、外のテラスに向かった。外のテラスは、阿武隈川に向かって作られていて、今は客は通していなかった。
外から、テラスにまわると、水上はテラスにいた猫を撫でていた。
「あれ?成瀬君、夕飯食べに来たの?」
「そう。何してんの?」
「野良猫だけど人懐っこいんだよね。黒猫で可愛いくない?さっきマスターがミルクわけてくれたんだよ」
黒猫は水上に撫でられると気持ち良さそうに、目を閉じていた。
「あっ、合宿どうだった?楽しかった?由香が疲れた〜って電話で言ってたよ」
「楽しかったよ」
「そっ、良かったね。もうミルクいらないの?もっと飲まないと大きくなれないよ?」
水上が猫に話しかけていたが、猫は腹がいっぱいなのか、ミルクに目もくれずに目を閉じていた。
「、、、でも、水上が来なかったから」
水上が猫から視線を移して、俺の顔を見た。
「来なかったから?」
俺も自分で一体何が言いたいのかわからなくて、頭がごちゃごちゃに、こんがらがっていた。
水上も俺の様子がおかしいので不思議そうな顔をしていた。水上は仲の良い友達で、それ以上の感情はなかったはずだ。
なのに最近、水上に会っていない時も水上の事を考えている自分がいた。
「ちょっと心配してた、、、由香ちゃんから、水上のお姉さんの事聞いたし」
水上は俺の言葉で一瞬にして、顔を歪めた。
夕方の蒸し暑い風が吹いてきて、肌にじとっと、からみついてきた。阿武隈川を見ると夕陽が溶け出して、水面をオレンジ色に染めていた。
「そっか、、、聞いたんだ」
水上がそう言った時、黒猫が目を開けてキョロキョロ周りを見渡すと、突然駆け出して行ってしまった。
「あっ、、、」水上は去っていった黒猫を暫く目で追っていた。
「なぁ、、、大丈夫か?」俺が声をかけると、水上の歪んだ顔から、一粒涙が溢れてきた。
その涙は、テラスの床に落ちて黒く染めた。
水上は涙を拭き取ろうとしたが、間に合わなかった。
「大丈夫かって聞かれると、涙って出てくるよね」
「水上、何か出来ること、、、」
「私のせいなの。私のせいでお姉ちゃんは死んじゃったの。私がいなければ、きっと今もお姉ちゃんは生きてた」
水上は阿武隈川の方を見つめて話しだした。
「今更謝っても、どうする事も出来ない。だって、もういないから。私のこんな手、無くなればいいのに」
"折ればいいじゃん。別にいいよ。こんな腕、私だって邪魔だよ"
不良に言っていたあの言葉は、本心だったんだ。才能があり過ぎた故に、周りの大人が狂ってしまった。それは決して水上のせいではなく、寧ろ被害者なはずなのに、水上は一人でずっと自分を責め続けていた。
俺は、泣いている水上を見ていると胸が痛かった。それは、ヒリヒリするような擦り傷の痛みではなく、胸から突き上げてくるような鈍い痛みだった。この感情に名前を付けるとしたら一体何て名前になるんだろうか。俺は全然思い浮かばなかったが、無意識に水上の綺麗な手を握っていた。
「水上、俺が一緒に花火大会に行ってもいい?
灯籠流し、一緒にしようよ」
水上は、俺の顔を見つめて少し驚いた顔をしていたが、ゆっくりと頷いて「ありがとう」と言った。水上の手は涙で濡れていたが、俺にとってはこの手が物凄く大事なように思えた。
中へ入ると、祖父が俺に声をかけてきた。
「おー!佳月、夕飯ちょっと待て、さっきまで珍しく客が立て込んでたんだよ。今オムライス作るから。そうだ!外のテラスに灯ちゃんもいるから、夕飯食べて帰るようにいってくれ」
「え?水上きてるの?」
「ああ、さっきまで何曲か弾いてくれたよ。忙しかったから、ホールまで手伝ってくれたよ」
俺はそれを聞いて慌てて、外のテラスに向かった。外のテラスは、阿武隈川に向かって作られていて、今は客は通していなかった。
外から、テラスにまわると、水上はテラスにいた猫を撫でていた。
「あれ?成瀬君、夕飯食べに来たの?」
「そう。何してんの?」
「野良猫だけど人懐っこいんだよね。黒猫で可愛いくない?さっきマスターがミルクわけてくれたんだよ」
黒猫は水上に撫でられると気持ち良さそうに、目を閉じていた。
「あっ、合宿どうだった?楽しかった?由香が疲れた〜って電話で言ってたよ」
「楽しかったよ」
「そっ、良かったね。もうミルクいらないの?もっと飲まないと大きくなれないよ?」
水上が猫に話しかけていたが、猫は腹がいっぱいなのか、ミルクに目もくれずに目を閉じていた。
「、、、でも、水上が来なかったから」
水上が猫から視線を移して、俺の顔を見た。
「来なかったから?」
俺も自分で一体何が言いたいのかわからなくて、頭がごちゃごちゃに、こんがらがっていた。
水上も俺の様子がおかしいので不思議そうな顔をしていた。水上は仲の良い友達で、それ以上の感情はなかったはずだ。
なのに最近、水上に会っていない時も水上の事を考えている自分がいた。
「ちょっと心配してた、、、由香ちゃんから、水上のお姉さんの事聞いたし」
水上は俺の言葉で一瞬にして、顔を歪めた。
夕方の蒸し暑い風が吹いてきて、肌にじとっと、からみついてきた。阿武隈川を見ると夕陽が溶け出して、水面をオレンジ色に染めていた。
「そっか、、、聞いたんだ」
水上がそう言った時、黒猫が目を開けてキョロキョロ周りを見渡すと、突然駆け出して行ってしまった。
「あっ、、、」水上は去っていった黒猫を暫く目で追っていた。
「なぁ、、、大丈夫か?」俺が声をかけると、水上の歪んだ顔から、一粒涙が溢れてきた。
その涙は、テラスの床に落ちて黒く染めた。
水上は涙を拭き取ろうとしたが、間に合わなかった。
「大丈夫かって聞かれると、涙って出てくるよね」
「水上、何か出来ること、、、」
「私のせいなの。私のせいでお姉ちゃんは死んじゃったの。私がいなければ、きっと今もお姉ちゃんは生きてた」
水上は阿武隈川の方を見つめて話しだした。
「今更謝っても、どうする事も出来ない。だって、もういないから。私のこんな手、無くなればいいのに」
"折ればいいじゃん。別にいいよ。こんな腕、私だって邪魔だよ"
不良に言っていたあの言葉は、本心だったんだ。才能があり過ぎた故に、周りの大人が狂ってしまった。それは決して水上のせいではなく、寧ろ被害者なはずなのに、水上は一人でずっと自分を責め続けていた。
俺は、泣いている水上を見ていると胸が痛かった。それは、ヒリヒリするような擦り傷の痛みではなく、胸から突き上げてくるような鈍い痛みだった。この感情に名前を付けるとしたら一体何て名前になるんだろうか。俺は全然思い浮かばなかったが、無意識に水上の綺麗な手を握っていた。
「水上、俺が一緒に花火大会に行ってもいい?
灯籠流し、一緒にしようよ」
水上は、俺の顔を見つめて少し驚いた顔をしていたが、ゆっくりと頷いて「ありがとう」と言った。水上の手は涙で濡れていたが、俺にとってはこの手が物凄く大事なように思えた。



