その後俺達も、吾郎に呼び出されて一人ずつ面談させられた。面談と言っても、俺と水上はかつあげされていた飯田を助けただけだから、すぐに解放された。ただ、帰りのバスがもうなくなっていて、俺と水上は歩いて帰るしかなくなった。
夕暮れの山道を二人で歩いていると、眼下に町並みが見えた。
「凄いね〜ここ絶景だったんだ」
「こう見ると、意外に建物結構あるよな?」
「程よい田舎で私はこの町好きだよ」
冬は雪が降るから大変な事もあるが、市内の方へ行けばそれなりに買い物も出来るし、確かに住みやすい町ではあった。
「でも俺は、卒業したら東京へ行きたいな」
「そうなの?」俺は昔から、いつかは絶対にこの町を出て、大きな町に住みたいという願望があった。
「水上は出たくないの?俺はもっと大きな所に出て、大きな事がしたい」
「へぇ〜成瀬君にそんな野望があったとは知らなかった。もっとこう、小さなありふれた幸せで満足するタイプかと思ってた」
「なんだよそれ。水上だって、何かやりたい事ないの?将来の夢とか」
「夢かぁ、、、幸せな家庭を築く事かな」
あまりにも水上らしくない答えで、俺は驚いた。水上なら、宇宙飛行士とかマジシャンとか突拍子もない大きな夢を語るかと思っていた。
「何か憧れがあるんだよねぇ〜。普通の一般的な家庭?パパとママが仲良くて、子供がいて犬とか飼っちゃって。そんなにお金がなくても、美味しい夕飯を皆んなで食べる。みたいな?」
俺も、片親で育ったから、両親のいる暖かな家庭に憧れる気持ちはわからなくもなかったが、何となく水上には、もっと現実離れした夢を持って欲しかった。それくらいの夢を叶えてしまいそうな力が、水上にはある気がしていた。
「うち、両親あんまり仲良くなかったんだよね。小さい頃から私のピアノの指導の仕方で喧嘩してて、今じゃ殆ど別居状態だし」
「そうなんだ、、、」
水上の表情がまた悲しそうに曇った気がした。
俺にはわからない、色々な事情を抱えているのかもしれない。
「私、父親が怖くて仕方なくてさ。小さい時からピアノ上手く弾けないと怒られてたから、父親の顔色伺って、嫌でもピアノ弾くの辞められなかった。ずっと言う事を聞いて、父親の言う通りにしてきたけど、、、もう辞めたくて。
私、あの人の子供だけど、操り人形ではないでしょ?だから初めて意思表示をしたの」
「意思表示、、、?」
「私にも意思があるという、反抗をした。もう支配され続けるのは嫌だったから」
だから、さっき飯田にも言っていたのか?
『黙って支配され続けるのは勿体ないよ』
水上は飯田と自分を重ね合わせていたのかもしれない。
「反抗してるから、今ピアノ休んでるって事?」
「そう。親は私をクラシックのコンクールに出したくて仕方ないみたいだけど。何かもうクラシックは弾けないの。弾こうとすると、手が震えちゃって無理なの。他のジャンルなら全然平気なんだけどね。喫茶店で弾くジャズも好きだし、バンドで弾くキーボードも楽しいし、ピアノ弾くのは嫌じゃないけどね」
俺は、水上の抱えている問題について、全てはわからなかったが、少なくとも水上が何か辛い思いを抱えている事を何となく感じた。
「俺はどんなジャンルでも水上の弾くピアノが好きだよ。綺麗で、自由で」
「ありがとう、、、私も成瀬君のギターが好きだよ。いつも少しピッチが前のめりだけど」
「おいっ!」
水上は珍しく、少し照れくさそうに笑った。
そして終業式の日、放課後のバンドの練習に、初めて飯田が参加した。
夕暮れの山道を二人で歩いていると、眼下に町並みが見えた。
「凄いね〜ここ絶景だったんだ」
「こう見ると、意外に建物結構あるよな?」
「程よい田舎で私はこの町好きだよ」
冬は雪が降るから大変な事もあるが、市内の方へ行けばそれなりに買い物も出来るし、確かに住みやすい町ではあった。
「でも俺は、卒業したら東京へ行きたいな」
「そうなの?」俺は昔から、いつかは絶対にこの町を出て、大きな町に住みたいという願望があった。
「水上は出たくないの?俺はもっと大きな所に出て、大きな事がしたい」
「へぇ〜成瀬君にそんな野望があったとは知らなかった。もっとこう、小さなありふれた幸せで満足するタイプかと思ってた」
「なんだよそれ。水上だって、何かやりたい事ないの?将来の夢とか」
「夢かぁ、、、幸せな家庭を築く事かな」
あまりにも水上らしくない答えで、俺は驚いた。水上なら、宇宙飛行士とかマジシャンとか突拍子もない大きな夢を語るかと思っていた。
「何か憧れがあるんだよねぇ〜。普通の一般的な家庭?パパとママが仲良くて、子供がいて犬とか飼っちゃって。そんなにお金がなくても、美味しい夕飯を皆んなで食べる。みたいな?」
俺も、片親で育ったから、両親のいる暖かな家庭に憧れる気持ちはわからなくもなかったが、何となく水上には、もっと現実離れした夢を持って欲しかった。それくらいの夢を叶えてしまいそうな力が、水上にはある気がしていた。
「うち、両親あんまり仲良くなかったんだよね。小さい頃から私のピアノの指導の仕方で喧嘩してて、今じゃ殆ど別居状態だし」
「そうなんだ、、、」
水上の表情がまた悲しそうに曇った気がした。
俺にはわからない、色々な事情を抱えているのかもしれない。
「私、父親が怖くて仕方なくてさ。小さい時からピアノ上手く弾けないと怒られてたから、父親の顔色伺って、嫌でもピアノ弾くの辞められなかった。ずっと言う事を聞いて、父親の言う通りにしてきたけど、、、もう辞めたくて。
私、あの人の子供だけど、操り人形ではないでしょ?だから初めて意思表示をしたの」
「意思表示、、、?」
「私にも意思があるという、反抗をした。もう支配され続けるのは嫌だったから」
だから、さっき飯田にも言っていたのか?
『黙って支配され続けるのは勿体ないよ』
水上は飯田と自分を重ね合わせていたのかもしれない。
「反抗してるから、今ピアノ休んでるって事?」
「そう。親は私をクラシックのコンクールに出したくて仕方ないみたいだけど。何かもうクラシックは弾けないの。弾こうとすると、手が震えちゃって無理なの。他のジャンルなら全然平気なんだけどね。喫茶店で弾くジャズも好きだし、バンドで弾くキーボードも楽しいし、ピアノ弾くのは嫌じゃないけどね」
俺は、水上の抱えている問題について、全てはわからなかったが、少なくとも水上が何か辛い思いを抱えている事を何となく感じた。
「俺はどんなジャンルでも水上の弾くピアノが好きだよ。綺麗で、自由で」
「ありがとう、、、私も成瀬君のギターが好きだよ。いつも少しピッチが前のめりだけど」
「おいっ!」
水上は珍しく、少し照れくさそうに笑った。
そして終業式の日、放課後のバンドの練習に、初めて飯田が参加した。



