アーリータイムズ

 俺は、唖然としてその場に立ち尽くしたし、
突進された不良もいきなり女子が突進してきてびっくりして、思わず持っていた財布を落とした。勿論飯田も、いきなり目の前に現れた水上に驚いて呆然としていた。

 「何だよお前!いきなり!」

不良がそう言った所で、突進してきた女子が有名なピアノ少女の水上 灯と気づいたようだった。

  「いい加減に辞めなさいよ!人の金にたかって恥ずかしいと思わないの!」

水上の言葉に、不良が怒りを露わにして水上の腕を掴んだ。

  「お前!神の手とか言われてるやつだろ!調子に乗りやがって、腕へし折ってやろうか!」

俺は駆け出して、慌てて間に入っていった。

  「折ればいいじゃん。別にいいよ。こんな腕、私だって邪魔だよ」

水上は、ただ一点を見つめて、不良の顔を見ていた。余りにも、水上の顔が気迫に満ちていて、迫力があったせいか、不良が少し怯んだ。

 「何やってんだよ!離せって!そんな事したら、大変な事になるぞ、退学じゃすまねーぞ」

俺が間に入ると、流石に女に暴力振るうのは、気が引けたのか、不良は水上の腕を離した。その時後ろから声がして、生活指導の吾郎が騒ぎを聞いてやってきた。吾郎は、不良達に声をかけると、生活指導室に連れて行ってしまった。
 
「お前達は一旦、ここで待ってろ!」

俺達も吾郎にそう言われて、仕方なく中庭で待機する事になった。三人で、中庭で待機していると飯田がボソボソと話しだした。

 「なんで、わざわざ助けに来たんだよ」

「別に助けてないし」

何故か水上が拗ねたような顔をしていた。俺は、水上が大声を出して突進していく姿を思い出すと、笑いが込み上げてきた。

 「何笑ってんの?こんな時に。成瀬君、私あと少しで、あの不良に腕へし折られそうだったんだよ?」

 「いや、だってさ、急に大声で叫んであいつに突進して行く姿みたら、なんかこいつ何やってんだぁ〜って笑えてきたんだよ。お前しかも、めっちゃ足早いのね」

あの不良に勝てると思ったのか?本当に水上の考えている事は謎だった。俺が笑ってると、何故か飯田まで笑いだした。

 「でも、あの気迫は凄かったな、、、ちょっとあいつらビビってたな。思わず俺の財布おとしてたし」

「でしょ?飯田君もあれくらいの危機迫る雰囲気を出さなきゃ駄目だよ。絶対負けない!っていう気持ちが大切なんだよ?」

「、、、俺はもう諦めてるから、中学から目つけられてたし、まさか高校まで一緒だと思わなかった」

飯田は、そう言いながら自分の膝を抱えて、小さくなった。

 「俺、、、学校辞めようと思ってる」

飯田は、自分の身体を更に小さくして小刻みに震えていた。水上はそんな飯田をただ見つめていた。虐められているなら、無理にこの高校に通わなくてもいい。俺はそう思った。飯田の行きやすい学校に行った方がきっと幸せだろう。

 「じゃあさ、どうせ辞めるなら最後に文化祭でドラム叩いてよ」

「え?」

「だって、辞めるなら別にもう何言われても構わないでしょ?中学からずっとあの子達にいじめられてたなら、最後くらい見返さないと駄目だよ」

 飯田は、顔を上げて水上の方を見つめた。髪の毛で表情をみる事は出来なかったけれど、少し気持ちが揺れている気がした。

 「ドラム叩いてる、飯田君、超かっこよかったよ。絶対見返せる。黙って最後まで支配され続けるのは無体ないよ」