アーリータイムズ

 放課後、俺と水上と加藤は三人にでまたバンドの練習をしていた。今流行りのインディーズバンドのコピーをする事になったが、そのバンドのボーカルより、加藤の方が歌が上手かったし、水上が編曲した曲が、お世辞じゃなく原曲よりカッコよかった。今日は助っ人の軽音部の幽霊部員の女子がベースで入ってくれたから、余計に完成に近づいてはいたが、やっぱりドラムがいないのはきつかった。

 「凄いね、短期間でここまで仕上げるのはなかなかだね」

軽音部の長田 彩子が、ベースをおろしながら、俺達に言った。
 七月も下旬で、外では蝉が鳴き始めていた。
もうすぐ終業式で、夏休みが始まる。そうすると、なかなか練習も出来なくなってしまうので、俺達は焦っていた。

 「ねぇ水上さん、うちのバンド入らない?水上さんなら曲も作れるんじゃない?これだけかっこいい編曲もできるんだし」

水上はまさか長田から、バンドに誘われると思っていなかったらしいが、長田の言う通り水上なら作曲も出来そうだった。けれど水上は直ぐに断っていた。

 「私、特別音楽が好きなわけじゃないんだよね。今回のバンドも、文化祭の出し物だからやりたいなぁ、くらいだから」

「えー!勿体無いなぁ!絶対バンドのキーボードやってくれたらカッコよくなるのになぁ」

「風ちゃんは?風ちゃんをボーカルに引き抜いたら?こんな良い声の人なかなかいないよ!」

加藤がそんな事を急に言われて驚いていた。

 「流石にバンドのボーカルがこの見た目だと、人気出ないでしょ?いくら声がいいからって、人気商売なんだからヴィジュアルもよくないとね」

「風ちゃん。痩せなよ十キロくらい。そしたら、顔も悪くないし、歌声でカバーできるよ」

水上がとてつもなく、失礼な事を言っても、加藤は笑っていた。加藤は、その身体の大きさ同様にとても大らかな人間だった。

 「酷いな。十キロくらいじゃどうにもならないよ。俺百キロ以上あるし。こんな、ゲイの巨漢絶対ダメだって」

加藤は、笑っていたが長田はそこまで表情には出さなかったが、若干引いていた。ゲイの噂はあったが、こんなに本人があっけらかんと公表するとは思わなかったらしい。
 まあ、それについては俺も少し驚いた。