俺達の高校は二学期が始まってすぐの九月に文化祭があったので、一学期の最後から文化祭の準備をはじめていた。文化祭実行委員が前に出て出し物の案を募っていた。
 昼休み後の気だるい午後と言うこともあり、俺は半分眠りながら話しを聞いていたし、他のクラスメイトも、蒸し暑い風を感じながら、心ここにあらずで、うちわで扇いだりしながら実行委員の話しを聞いていた。

 あまり良い出し物の案が出なかったので、実行委員が困っていた。そこで、クラスの中心的な女子が手を挙げた。

 「はい!せっかくうちのクラスには、灯がいるので、灯のピアノリサイタルみたいのがいいと思います!ピアノを聴きながら、ジュースとかお菓子が食べられるの!どう?」

俺は斜め前の席に座っている水上を見ると、あきらかに眠っていた。俺は後ろから消しゴムを水上に向かって投げつけると、水上がびくっとして起き上がった。
 水上が俺の方を見て睨みつけると、さっきの女子がまた言った。

「どう?灯、文化祭でピアノ弾いてくれる?」

 いきなり寝起きに、そんな事を言われて水上は面くらっていた。
「ピアノってクラシック?」

「ジャンルは任せるけど、、、」

水上は少し考えていた。さっきまで眠っていたクラスメイトも目を覚まして、水上に注目していた。

 「いいけど、私ソロは嫌だなぁ。バンドがやりたい!」

また突飛な事を突然言い出した。しかも水上の突飛な発言はそれだけで終わらなかった。

 「バンド!?いいじゃんそれ!面白そう!でもメンバーは?」

「メンバーならもう決まってる」

は、、、?水上の言葉にクラス中の人間が一瞬止まった。クラス全員の視線を集めて、水上がメンバーを発表した。

 「まず、キーボードは私ね?」

これは辛うじて皆んな頷いた。ピアノが弾けるんだから、キーボードも弾けるだろう。

 「次!ギター!成瀬君!」

はぁぁ?俺は驚き過ぎて声が出なかった。こいつは本当に何を言い出すんだろう、、、。

 「ドラム!飯田君!」

これには皆んな驚いていた。まさか虐められっ子の飯田君がメンバーに選ばれると誰も思っていなかった。飯田君も天パの下から信じられない顔をしていた。

 「ボーカル!加藤君!」

加藤君と呼ばれたそのクラスメイトは、お世辞にもかっこいいとは言えず、お腹が出ていてかなりの巨体で、ゲイと噂されていた眼鏡をかけた男だった。

 「ベースがいないんだけど、軽音部の誰かを引っ張ってくるね」

水上はそう言うと座ってしまった。なんだこの異色のメンバーは、、、。
 しかも何で俺が勝手にメンバーにされている。
他の二人も無理と思ったのか「無理無理!」と反抗していた。
 
 「えっ?決定?」文化祭実行委員が戸惑いながら言うと、水上がきっぱりと言った。

 「決定です」