朝のトレーニングが終わったて、校舎に向かう途中で、裏庭の影で何かを見つめている水上の姿が見えた。俺は水上に近づいていって、声をかけた。
「おはよう。何してんの?こんな所で」
水上は俺の腕を引っ張って、裏庭の植え込みの影にかくれるようにした。
「何だよ!びっくりしたな!」
「イジメだよ!ほら見て!あれ同じクラスの飯田君でしょ?」
「イイダ君?」俺は聞き覚えのない名前だったが、裏庭にいる数人の男子の中に、確かに同じクラスに見た顔がいた。
「同じクラスだよ!何で知らないの?吹奏楽部の飯田君だよ」
「お前こそ、よくそこまで把握してんな。俺基本部活の奴らとしかつるんでないからわかんねーよ」
飯田君を囲むように、いかにも不良っぽい男子が何かこそこそ詰め寄っていた。飯田君は、いかにも虐められそうなキャラで、小さくて細い身体をしていて、鞄から財布を取り出した。
「ほらっ!あれ絶対にカツアゲってやつだよ!
成瀬君止めてあげて!」
「唐揚げみたいに言うなよ!何で俺が止めなきゃならないんだよ」
「私が行ってもいいけど?行かせるつもり?
成瀬君、背だけは馬鹿高いんだから、殴られても大丈夫だよ。何の為にそんなに身体鍛えあげてるの」
確かに俺は祖父に似て背が高かったが、今までの人生で喧嘩なんてした事は一度もなかった。けれど俺が行かなければ、本当に水上が飛び出していきそうだったので、仕方なく止めに入った。
「おーい!!何してんだよ」
俺が中庭に入っていくと、中庭いた数人の男子達が一斉にこっちを見た。飯田君も驚いたようにこちらを見ていたが、天パの前髪で顔が隠れていて表情はよくわからなかった。
「誰だよ?」一番リーダー格っぽい男が俺に聞いてきた。
「飯田君と同じクラスのものです。カツアゲ辞めろって」
「は?かつあげなんてしてねーよ!」
男がちょっと殺気だったが、俺の方が身長がだいぶ高かったせいか、相手が一瞬怯んだ。その時植え込みから水上が大きい声で叫んだ。
「あー!!!五郎がきたー!!!」
吾郎とは、生活指導の柔道部顧問の大きな男の先生で、皆んなから恐れられていた。水上の声を聞いて、いじめっ子達は渋々中庭から出ていった。
飯田君は財布を落としたまま、その場に立っていた。俺は財布を拾いあげると飯田君に渡した。
「大丈夫?」水上もやってきて声をかけた。
「凄い馬鹿でかい声だったな」
「もっとでるよ?出してみる?」水上がそう言ってお腹に手をあてると、飯田君は何も言わずにその場を去っていった。
「何だ?あいつ」
「でも、リズム感だけは素晴らしいんだよ」
「何の話し?」俺が聞いても、水上は教えてくれなかった。
「おはよう。何してんの?こんな所で」
水上は俺の腕を引っ張って、裏庭の植え込みの影にかくれるようにした。
「何だよ!びっくりしたな!」
「イジメだよ!ほら見て!あれ同じクラスの飯田君でしょ?」
「イイダ君?」俺は聞き覚えのない名前だったが、裏庭にいる数人の男子の中に、確かに同じクラスに見た顔がいた。
「同じクラスだよ!何で知らないの?吹奏楽部の飯田君だよ」
「お前こそ、よくそこまで把握してんな。俺基本部活の奴らとしかつるんでないからわかんねーよ」
飯田君を囲むように、いかにも不良っぽい男子が何かこそこそ詰め寄っていた。飯田君は、いかにも虐められそうなキャラで、小さくて細い身体をしていて、鞄から財布を取り出した。
「ほらっ!あれ絶対にカツアゲってやつだよ!
成瀬君止めてあげて!」
「唐揚げみたいに言うなよ!何で俺が止めなきゃならないんだよ」
「私が行ってもいいけど?行かせるつもり?
成瀬君、背だけは馬鹿高いんだから、殴られても大丈夫だよ。何の為にそんなに身体鍛えあげてるの」
確かに俺は祖父に似て背が高かったが、今までの人生で喧嘩なんてした事は一度もなかった。けれど俺が行かなければ、本当に水上が飛び出していきそうだったので、仕方なく止めに入った。
「おーい!!何してんだよ」
俺が中庭に入っていくと、中庭いた数人の男子達が一斉にこっちを見た。飯田君も驚いたようにこちらを見ていたが、天パの前髪で顔が隠れていて表情はよくわからなかった。
「誰だよ?」一番リーダー格っぽい男が俺に聞いてきた。
「飯田君と同じクラスのものです。カツアゲ辞めろって」
「は?かつあげなんてしてねーよ!」
男がちょっと殺気だったが、俺の方が身長がだいぶ高かったせいか、相手が一瞬怯んだ。その時植え込みから水上が大きい声で叫んだ。
「あー!!!五郎がきたー!!!」
吾郎とは、生活指導の柔道部顧問の大きな男の先生で、皆んなから恐れられていた。水上の声を聞いて、いじめっ子達は渋々中庭から出ていった。
飯田君は財布を落としたまま、その場に立っていた。俺は財布を拾いあげると飯田君に渡した。
「大丈夫?」水上もやってきて声をかけた。
「凄い馬鹿でかい声だったな」
「もっとでるよ?出してみる?」水上がそう言ってお腹に手をあてると、飯田君は何も言わずにその場を去っていった。
「何だ?あいつ」
「でも、リズム感だけは素晴らしいんだよ」
「何の話し?」俺が聞いても、水上は教えてくれなかった。



