「皆さん、数ヶ月もの間ありがとうございました。素晴らしい休暇を頂けて、私は本当に幸せでした」

 カブさんは、今日はビシッとスーツを着こなし、髪の毛も綺麗に切って、今までのカブさんと別人の様だった。
 その姿は、俺がよくTVで見ていた、実業家でタレントの川上そのものだった。

 「若い人と交流出来るのは、本当に素晴らしい事です。
若い時は短い。皆さんあっと言う間に時間が過ぎますよ、可能性はこの海のように無限です。それに気づく事が出来さえすれば、最高の人生を送る事が出来ますよ」

 カブさんが泣いているイゾンを抱きしめた。

 「私もまだまだ、夢を追いかけている途中です。何歳になっても決して諦めないですよ」

 「カブさんありがとう。いつも味方でいてくれて、本当に大好きです」

 イゾンが泣きながら言う。

 「大丈夫ですよ。少しの自信をつければ何だってやれますよ。イゾンさんなら」

 「ありがとうございました!」
俺はカブさんに手を差し出すと、二人で力強く握手をした。

 「シンジさんの音楽で、世界を明るく照らしてあげてください」

 俺は答えるようにカブさんの手を強く握った。
俺はちっとも悲しくなかった。
何故だろう、またカブさんと会える気がしたからだ。

 「玲さん、熊さん、お世話になりました。
また遊びに来ますからね。絶対に。
今度くる時はチャーター機でこの島に乗り付けてみせますから」

 そう言って大きな声で笑う。
カブさんは戻って行った。
夢のようなこの島から、現実の島で戦う為に。