結局この日は、玲が三匹だけ釣って後は全くつれなかった。
そろそろ帰るかと、話し出した時に玲が思い出したように言う。
「私、そこのシャッターに絵を描いて欲しいって言われてたんだ」
それは、前に描いたシャッターの隣りだった。
「なんか、ここのオーナーさんが、シャッターに絵が描いてあったら、賑やかで良いねって言ってて、最初は一枚だけ描くはずだったんだけど、思ったより評判いいから全部に描いて欲しいって言われたの」
「そうなんですね。確かにあのシャッターアートかっこいいし、港に映えますよね!玲さんが描く所、僕も見てみたいな!!」
そして、急遽今から玲がシャッターアートを描く事になった。
俺達は手分けして、ホテルに戻って、釣りの片付けをして、ペンキなどの道具を玲のアトリエから運んでくる。
準備が終わり、俺たち二人はまるで観客のように座って、玲が描き始めるのを今か今かと、待つ。暫くの間、シャッターを眺めて考えていた玲が、ハケを手に取りペンキをつけてシャッターに線を描いていく。
描き始めた途端、玲はこの間と同じように、やはりいきなり表情ががらっと変わった。
玲の内側から物凄いパワーが出ているように全身で絵を描いていく。
その気迫に圧倒されたのか、イゾンが隣りで『凄い』と呟く。
玲はまるで何かがのりうつったように、一心不乱に描いていく。
───それは夜空だった。海の上を星と月が照らす夜空だ。
この間玲と見た夜空のように、空から溢れ落ちそうな星だ。
今にも掴めそうな星を月が照らしている。
静かだけれど、確かな光だった。
俺はそれを見た時に、電流が走ったように、自分の身体の中に大きな音楽が流れていくような衝撃を感じた。
島へ来た時から、今日までの記憶がぶわーっと蘇ってくる。
島の雄大な景色、熊さんの作る美味しい料理、カブさんやイゾンと話した、他愛も無い会話、
そして玲が絵を描く姿。
その全てが自分の頭の中でメロディとなって溢れ出てくる。
それは今まで栓をしてあったものの、栓が外れ一気に外へ流れ出たような感じだった。
今までの自分は、曲を作ろうと思って
作っていた。
だから、自分の頭に勝手にメロディが流れて溢れ出てくる経験なんてなかった。
俺は我慢する事が出来ずに、衝動的に駆け出していた。
「シンジさん?」
後ろでイゾンが呼んでいたが、殆ど聞こえていなかった。
俺はホテルに戻ると、キッチンにいる熊さんに声をかけた。
「熊さん!ギター貸してください!」
俺がいきなり叫ぶと、熊さんは驚いていたが、珍しく少し笑って俺に言った。
「いいぞ、好きなだけ使え。やっと弾く気になったか」
俺は、ロビーに立てかけてあるギターを手に取り、メモ用紙とペンを持って外のベンチへ行った。
そして俺は深呼吸をした。
久しぶりに触るギターは懐かしい感覚がした。
ずっと求めていたが、触る事が出来なかったギターだ。
俺は恋焦がれていたものに、やっと触れられたような気持ちになって、高揚した。
緊張しながら、俺は頭にずっと流れているメロディを丁寧に弾いていった。
そろそろ帰るかと、話し出した時に玲が思い出したように言う。
「私、そこのシャッターに絵を描いて欲しいって言われてたんだ」
それは、前に描いたシャッターの隣りだった。
「なんか、ここのオーナーさんが、シャッターに絵が描いてあったら、賑やかで良いねって言ってて、最初は一枚だけ描くはずだったんだけど、思ったより評判いいから全部に描いて欲しいって言われたの」
「そうなんですね。確かにあのシャッターアートかっこいいし、港に映えますよね!玲さんが描く所、僕も見てみたいな!!」
そして、急遽今から玲がシャッターアートを描く事になった。
俺達は手分けして、ホテルに戻って、釣りの片付けをして、ペンキなどの道具を玲のアトリエから運んでくる。
準備が終わり、俺たち二人はまるで観客のように座って、玲が描き始めるのを今か今かと、待つ。暫くの間、シャッターを眺めて考えていた玲が、ハケを手に取りペンキをつけてシャッターに線を描いていく。
描き始めた途端、玲はこの間と同じように、やはりいきなり表情ががらっと変わった。
玲の内側から物凄いパワーが出ているように全身で絵を描いていく。
その気迫に圧倒されたのか、イゾンが隣りで『凄い』と呟く。
玲はまるで何かがのりうつったように、一心不乱に描いていく。
───それは夜空だった。海の上を星と月が照らす夜空だ。
この間玲と見た夜空のように、空から溢れ落ちそうな星だ。
今にも掴めそうな星を月が照らしている。
静かだけれど、確かな光だった。
俺はそれを見た時に、電流が走ったように、自分の身体の中に大きな音楽が流れていくような衝撃を感じた。
島へ来た時から、今日までの記憶がぶわーっと蘇ってくる。
島の雄大な景色、熊さんの作る美味しい料理、カブさんやイゾンと話した、他愛も無い会話、
そして玲が絵を描く姿。
その全てが自分の頭の中でメロディとなって溢れ出てくる。
それは今まで栓をしてあったものの、栓が外れ一気に外へ流れ出たような感じだった。
今までの自分は、曲を作ろうと思って
作っていた。
だから、自分の頭に勝手にメロディが流れて溢れ出てくる経験なんてなかった。
俺は我慢する事が出来ずに、衝動的に駆け出していた。
「シンジさん?」
後ろでイゾンが呼んでいたが、殆ど聞こえていなかった。
俺はホテルに戻ると、キッチンにいる熊さんに声をかけた。
「熊さん!ギター貸してください!」
俺がいきなり叫ぶと、熊さんは驚いていたが、珍しく少し笑って俺に言った。
「いいぞ、好きなだけ使え。やっと弾く気になったか」
俺は、ロビーに立てかけてあるギターを手に取り、メモ用紙とペンを持って外のベンチへ行った。
そして俺は深呼吸をした。
久しぶりに触るギターは懐かしい感覚がした。
ずっと求めていたが、触る事が出来なかったギターだ。
俺は恋焦がれていたものに、やっと触れられたような気持ちになって、高揚した。
緊張しながら、俺は頭にずっと流れているメロディを丁寧に弾いていった。



