しかし、バンドを始めてからはまた俺の悪い癖が出てきた。
俺は自分の目標が明確になれば成る程、妥協を許せなくなっていた。
 少しでも、腕が悪いと感じるメンバーがいたら、すぐにきって新しいメンバーを探してきて加えた。

 作詞、作曲、アレンジから、演奏する順番、全てにおいて、俺が一人で決めた。
いわば、完全なるワンマンバンドだ。普通ならメンバーから不満が出る所だが、俺のやり方でどんどん人気が出てきた事もあり、俺に文句を言う奴はいなかった。

 俺はもう、バンドと音楽の事しか考えられなくなっていた。

とにかく、時間が欲しい。

時間があればもっと音楽に打ち込める。そう思って、ホストを辞めた、、、。
 綾さんは最初、俺がホストを辞める事に対して怒っていたが、そのうち俺が本気でデビューを目指している事を知ると、応援してくれるようになった。

 俺はとにかくバンドに打ち込み、空いた時間にコンビニでバイトをした。
ホストの時に比べたら、生活はとてつもなく厳しかったが、それでも俺の生活は充実していた。
やりたい事を好きなだけ、めいいっぱいしている。そんな感覚だった。

 しかし、順風満帆だと思っていたバンド活動もかげりを見せ始める。