玲の身体は、俺が思っていたよりもずっと華奢だった。強く抱きしめたら折れてしまいそうだった。
 玲は俺に抱きしめられて、余程驚いたのか、暫くそのまま動かなかった。

 「シンジ、、、どうしたの?急に。もしかしてこれも仕事の一貫?」

玲が俺に抱きしめられながら言ってくる。

 「いや?俺今ホストじゃないし。ただ玲に恋してるだけだけど」

俺がそう言うと、玲が嬉しそうに俺の顔を見上げる。

「そうなの?シンジの初恋は私なの?」

「そうだよ。悪いかよ」

「悪くないよ、嬉しいよ。やっぱり、私が魅力的だったって事だね。」

さっきまで泣いていた玲が、もう笑っている。
玲の気分は山の天気なみにコロコロ変わる。

「そうだな、こんな女今まで出会った事ない、
魅力的過ぎるな、、、。で?どうすんの?俺にするの?」

真っ暗の中、波の音と、玲の心臓の音だけが聞こえる。

「、、、シンジにする」

玲がそう言って俺にぎゅっと抱きついた。
玲の小さな体の中で、確かに玲の心臓は力強く動いていた。

俺は、玲の耳に手で触れるとキスをした。

 今までだって、幾度となく女とキスをした事なんてあった。
けれど、こんなに心から大切だと思えた女は初めてかもしれない。

「………ドキドキする」

 玲が俺の腕の中で呟く。玲の鼓動が音を奏でる。それは、俺がどんなに頑張っても奏でられないような綺麗な音楽だった。

 俺は、その音が聞こえるだけで安心して、
何としてでも、俺はこの音を守りたいと思った。
そして出来れば、俺は死ぬまでこの音をずっと聞いていたいと願った。