三組のバンドの演奏が終わって、俺達三人は興奮冷めやまぬ中、曲の感想を言いあった。
 あのバンドが良かった、あの曲が良かったなど、三人で口々に喋りあった。
 そんな風に三人で話していると、さっきビールを運んできた金髪のお兄ちゃんが、俺達にビラを配ってきた。

 『今度、野外のライブをやるから良かった見にきなよ。今日出た三組もまた出るから』

 チラシを見ると、野外フェスみたいな事をやるみたいだった。
イゾンが楽しそうに言ってくる。
 「野外ライブなんて楽しそうだね!玲さんも誘って絶対に行こうよ!」

 もう行く気まんまんだった。
カブさんも、意外に嫌いじゃないのか、ノリノリだった。
そう言えば、カブさんが音楽番組のMCをしていたのを思い出す。
 俺達が盛り上がっていると、金髪のお兄ちゃんが言ってくる。

『でも、まだ絶対にやるとは決まっていないんだ。バンドがまだ揃ってなくて。
君達は楽器を弾かないの?弾けるなら参加してよ』

 俺達は顔を見合わせる。

 「僕もカブさんも楽器はひけないよね?シンジさん、、、やれば?」

イゾンが遠慮がちに俺に言ってくる。

 「そうですよ!私もシンジさんの演奏聞いてみたいです!」

 カブさんまでそんな事を言うので、金髪のお兄ちゃんも、期待した顔で俺を見てくる。

………けれど、俺はやっぱりバンドをやる気にならなかった。
 本音を言えば、玲の言う通りギターを弾きたい。
"成功"なんてもういらないからギターを弾きたい。
けれど、後ろめたさや、罪悪感、言葉にはできない色々な感情で弾こうと思えないのだ。
 またギターを弾いてしまったら、昔の自分に戻ってしまいそうで怖かった。

 俺の表情を見て、イゾンが何かを察したのか、
俺に言う。

 「急に言われても困りますよね。また機会があったら、絶対聞かせてくださいね」

 その機会がいつになるのか、あるのかもわからないが、俺は「あぁ」と頷いた。