玲がそこで急に笑い出す。

「なんてね!冗談だよ!なんて顔してるの!」

 でも俺はそれが冗談だと思えなかった。

自分の命を最大限にいかして生きていかないのならば、その健康な身体を私に譲って欲しい。

 そしたら、私はめいいっぱいに、自分の人生を堪能して生きていくのに………。
玲が言いたい事は、そういう事だと思う。
本当は東京へ行ってデッサンの勉強もしたいのだろう。
海外や色々な場所に行って、様々な体験をして、感性を磨きたい。

 玲のやりたい事は、それこそ山のように沢山あるのだろう。
でも、その全てを諦めながら、自分の出来る範囲で懸命に自分の人生を生きようとしている。

 それに引き換え俺はどうだろうか?
何か自分がやりたいと思う事があればすぐに出来て、行きたい場所があればいつでも行ける環境で、何だかんだ理由をつけて全て諦めている。
 最終的には自暴自棄になって、わけのわからないやつに付いて行って、犯罪に手を染めた。

 本当にどうしようもなく、弱くて情けない人間だ。

 俺は玲が眩しくて仕方なかった。
玲が俺だったら、きっと今頃この島に逃亡する事にはなっていないだろう。

 俺の中の何かが、全てがらっと変わっていくような感覚がした。

 玲を見ていると、俺は誰かに問いかけられている様な気がしてくる。

『お前は本当にそれでいいのか?そのままでいいのか?』

───俺の人生は本当に終わったのか?