俺はその後も自分の部屋で本を読み続けていた。
 そこに「ただいま〜!」とイゾンの大きな声がした。
 俺が下へ降りて行くと、カブさんとイゾンが魚釣りに行って帰ってきた所だった。

「シンジさん!見てくださいよ!大漁ですよ!」

 イゾンがクーラーボックスを開けると、中に魚が沢山入っていた。

「私とイゾン君は、漁師にでもなった方がいいかもしれないですね」

 カブさんが珍しく、得意気に言っている。

「凄いなぁ!こんなに釣れるんだぁ!」

 俺が驚いていると、丁度熊さんが買い物から帰ってきた。

「熊さん!お昼これで何か作ってください!」

 イゾンがクーラーボックスを、熊さんに差し出す。
丁度、正午を過ぎてお腹も減ってくる時間だったので、俺達は手分けして昼ご飯を作る事にした。
 男四人でワイワイ言いながら、昼食の準備に取り掛かる。

 その時、ホテルの電話が鳴った。
近くにいた、イゾンが電話に出ると俺に向かって言ってくる。

「シンジさん〜!玲さんから電話です!早く変われって!」

 そう言いながら、俺に受話器を渡してくる。
俺は、玲が何を言ってくるか、予想はできていたのでげんなりしながら電話に出る。

 「はい、もしもし」

 『シンジ!すぐ電話に出てっていったじゃん!
遅いよ!電話の前で待機しててよ!』

 何故かしらないが、俺が謎にキレられる。

 「あのさぁ。別に俺は玲からの電話なんていっさい待ってないからな。
待機するわけないよね!なんだよ、これから四人で楽しくランチ作るんだよ。邪魔するなよ」

『え〜いいなぁ!私も食べたい!何作るの?』

 「カブさんとイゾンが、魚釣ってきたから、それでアクアパッツァと、唐揚げにする予定。
良いだろ?」

 『なんで私が、魚好きだって知っててそういう事するの?嫌がらせ反対』

 「ってかお前デート中だろ?サーファー置いて何やってんだよ」

 『そうだった!助けてシンジ!今ランチにきてるんだけど、お酒飲めるか聞かれて、何て答えていいかわかんなくなっちゃった!』

 「は?お前酒飲めねーじゃん。はっきりと飲めないと断ればいいだろ」

 『でもさ、デートでそれ断るのも空気読めてなくない?向こうも気を使うし、少しでも飲んだフリした方がいいのかな?ノリ悪いって思われない?』

 「お前が空気読もうとしてる事に俺は驚いているけど、別に無理して飲む必要ないぜ。
 頭を45度傾けて『ごめん。飲めない。』って自分の中で最大限の可愛い声で言えば解決!」

 『嘘!そんなんで良いの?』

 「簡単だな。できるな。じゃあ!」

 俺は速攻で電話を切ってやった。こんな茶番に付き合ってらんないと思っていた。