「明らかに、上機嫌になってたけど、お前あいつに一目惚れしたの?」

 ウィンナーを挟むパンにバターを塗りながら、俺が玲に質問した。
玲は、あの律という男に打ち上げに誘われてから、傍目に見てもウキウキしていた。

 「これって一目惚れなのかな?
さっき、律に抱きかかえられた瞬間に、こう身体に電流が走ったように、ビビビ〜となったんだよね!」

 「いや、知らないけど。お前チョロいな。大丈夫かよ、あの律って男、相当遊んでるんじゃないの?サーファーなんてモテるだろうし、遊ばれて捨てられるのが落ちだろ」

 俺がそう言うと、玲は俺の腹にパンチをしてくる。

 「うっ……」

 俺は、思わずうめき声を出す。
良いところにパンチがきて、さっき食べたホットドッグが逆流するかと焦った。

 「そんな事ないって、さっきちょっと話したら、日本の大学に通う二年生で、私と同い年、
小学生からサーフィンを始めて、今回日本から近いから、この大会に参加したみたい。好きな食べ物はホットドッグだって」

 玲が、俺にとったら心底どうでも良い情報を垂れ流してくる。

 「夜の打ち上げ、島の人も大勢参加してかなり大きなイベントになるらしいよ!
一緒にご飯食べようって誘われちゃった!」

 玲のテンションは最高潮に上がっていた。

 「へえ〜まあ、変な男じゃない事を祈るよ」

 「強盗に言われたくないけどね。
私、今日のディナーで告白しようと思う!」

 玲がいきなり、先走り過ぎる事を言い出したので、俺は流石に止める。

 「はえーよ!!なんで今日初めて会って、今日の今日でいきなり告白するんだよ。
相手ドン引きするから辞めとけ!こういうのは、ちょっとずつ相手と距離を詰めてから、告白するもんなんだよ。
なんなんだお前は、獲物を見つけたチーターか?」

 玲は、俺の顔を見てきょとんとしている。
本当にこいつは、絵ばかり描いてきて恋愛をした事がないんだと思った。