「でも"コロシアム"結構ファンついてたのに、それでもダメだったんですねー!」
イゾンが意外そうに俺に言った。
「所詮インディーズだよ。メジャーデビュー出来なきゃ食ってはいけないよ」
「厳しい世界ですよね。音楽の世界も」
確かに厳しい世界だ。だからこそチャンスを掴めたら大きかった。
まあ、その前にバンドは空中分解してしまったが………。
「でも、カブさんも凄いですよね。成功してあんなにTVに出まくってて、俺最初カブさんが川上さんって全く気づきませんでした」
「いやぁ。私は成功して逆に失敗しました。
金と、地位に取り憑かれてしまった。
捕まるとなって、やっと我にかえりました」
「カブさん、バラエティーのMCしたり、かなり売れっ子タレントさんでしたよね。
TVはアニメしか見ない僕ですら、知ってましたよ」
俺も、殆どTVは見ないがカブさんの事は知っていた。
クリーンな実業家のイメージだったから、余計に事件を起こした時の世間の驚きようは凄かった。
「私は大学時代から、一国の主人になるのが夢でした。起業をして、自分の会社を持つ。
それだけを目標に頑張って、やっと自分の会社が軌道に乗り出して夢が叶ったら……夢はなくなりました」
「夢がなくなった……」
夢が叶わなかった俺には、夢が叶った後の事はわからない。
「夢はね、叶った瞬間に夢じゃなくなってしまうんですよ。あんなに叶えたかった夢が叶ったら、後は自分の足枷になってしまった。
僕は現状を維持する為にただ必死でした。
築き上げた物は絶対に壊せない。その為には何でもしなければいけない……いつしかそんな風に思っていました」
何となく気持ちはわかる気がする。
誰でも必死に手に入れた物は簡単に手放したくはないから躍起になるだろう。
「でも、今はもういいやと言う気持ちです。
自分が何をしたいのか、見えなくなっていましたが、やっとわかりました」
「今は何がしたいんですか?」
「ゆっくりしたいんです、、、もう、飽きる程にただ自然に任せてゆっくりしたかった。
だから捕まる前に、ここにきました。
ここでゆっくりしたら、出頭して私は罪を償います」
え───。
出頭するつもりなのか、カブさんは……。
俺は、てっきりここからまた違う所へ逃げるのかと思っていた。
俺は何故だからショックを受けていた。
いつも考えないようにしていたが、俺はこの島を出たら、どうすればいいか、ちっとも考えられずにいた。
だから、カブさんの覚悟がとても重かった。
「若いと言うのは、何よりも素晴らしい事です。時間はどんどん減っていってしまいますからね。お二人はまだ若い。
やり直すんです。一から始めても、まだまだ時間は有り余っていますよ」
カブさんにそう言われても、俺はやり直せる気がしなかった。
バンドを辞めた時点で俺は死んでしまったも同然だと思っていた。
バンドをしていない自分なんて、亡霊と同じようなもんだ。
イゾンが意外そうに俺に言った。
「所詮インディーズだよ。メジャーデビュー出来なきゃ食ってはいけないよ」
「厳しい世界ですよね。音楽の世界も」
確かに厳しい世界だ。だからこそチャンスを掴めたら大きかった。
まあ、その前にバンドは空中分解してしまったが………。
「でも、カブさんも凄いですよね。成功してあんなにTVに出まくってて、俺最初カブさんが川上さんって全く気づきませんでした」
「いやぁ。私は成功して逆に失敗しました。
金と、地位に取り憑かれてしまった。
捕まるとなって、やっと我にかえりました」
「カブさん、バラエティーのMCしたり、かなり売れっ子タレントさんでしたよね。
TVはアニメしか見ない僕ですら、知ってましたよ」
俺も、殆どTVは見ないがカブさんの事は知っていた。
クリーンな実業家のイメージだったから、余計に事件を起こした時の世間の驚きようは凄かった。
「私は大学時代から、一国の主人になるのが夢でした。起業をして、自分の会社を持つ。
それだけを目標に頑張って、やっと自分の会社が軌道に乗り出して夢が叶ったら……夢はなくなりました」
「夢がなくなった……」
夢が叶わなかった俺には、夢が叶った後の事はわからない。
「夢はね、叶った瞬間に夢じゃなくなってしまうんですよ。あんなに叶えたかった夢が叶ったら、後は自分の足枷になってしまった。
僕は現状を維持する為にただ必死でした。
築き上げた物は絶対に壊せない。その為には何でもしなければいけない……いつしかそんな風に思っていました」
何となく気持ちはわかる気がする。
誰でも必死に手に入れた物は簡単に手放したくはないから躍起になるだろう。
「でも、今はもういいやと言う気持ちです。
自分が何をしたいのか、見えなくなっていましたが、やっとわかりました」
「今は何がしたいんですか?」
「ゆっくりしたいんです、、、もう、飽きる程にただ自然に任せてゆっくりしたかった。
だから捕まる前に、ここにきました。
ここでゆっくりしたら、出頭して私は罪を償います」
え───。
出頭するつもりなのか、カブさんは……。
俺は、てっきりここからまた違う所へ逃げるのかと思っていた。
俺は何故だからショックを受けていた。
いつも考えないようにしていたが、俺はこの島を出たら、どうすればいいか、ちっとも考えられずにいた。
だから、カブさんの覚悟がとても重かった。
「若いと言うのは、何よりも素晴らしい事です。時間はどんどん減っていってしまいますからね。お二人はまだ若い。
やり直すんです。一から始めても、まだまだ時間は有り余っていますよ」
カブさんにそう言われても、俺はやり直せる気がしなかった。
バンドを辞めた時点で俺は死んでしまったも同然だと思っていた。
バンドをしていない自分なんて、亡霊と同じようなもんだ。



