「デッサン力とかですか?ちょっと絵については、まったく素人でわからないので、予想もつかないんですが…」
折末さんは、ゆっくりと首を振った。
「彼女の絵を見て、何か感じる物はありませんでしたか?」
「感じる物………よくわからないんですが、絵から気迫というか、パワーというか、大胆さや激しさを感じました。
それでいて、繊細というか、優美というか、とにかく一度見たら心から離れなくなりました」
折末さんはコーヒーを一口飲み、嬉しそうにゆっくり頷いた。
この人もきっと、初めて玲の絵を見た時に同じように感じたのだろう。
「画家にとって何が一番大事か、様々な意見があると思いますが、僕が思うに『訴えかける何か』がなければ、どんな絵でも綺麗なだけで心には残らないと思います」
「訴えかける何か……」
「創作をする人間は、絵に限らず、皆んなそうじゃありませんか?何か表現したい事や、言いたい事があるから創作する。ただ好きなだけでは絵は描けません。訴える物が強ければ強いほど、人の心を打つと………僕は思っています」
玲がシャッターに絵を描いていた姿を思い出す。
誰の言葉も耳に届かないくらいの、集中力で一気に書き上げていた。
切迫したように一心不乱に自分と絵だけの世界にいるようだった。
玲は何を思って、絵を描いていたんだろうか。
俺なんかには想像も出来ないような事を、頭に描いているのかもしれない。
「正直、玲さんはデッサン力はないかもしれません。多分今まで全部自己流で、専門の人に絵を習った事がないのかもしれない。
けれど、彼女はきっと審美眼に優れているのです。通常の人間が気づかないような、繊細な物の美しさまで、彼女には見えて、それをより美しく表現できる。それに、加えて彼女にはきっと何か世間に知らしめたい事があるんでしょう」
知らしめたいこと?玲が訴えかけたい事とはなんなんだろう。
「彼女の絵にはよく、それが現れています。
だから、人の心をうつ………。あなたが魅了されたように」
玲の絵は、俺だけじゃなくて世界中の人を夢中にさせる。そんな気がした………。
ロビーの扉が開き、熊さんと玲が入ってきた。
二人は三枚の絵を持ってきて、ロビーに並べた。
折末さんはその三枚の絵を、まるで宝物を眺めるように眺めていた。
しばらく何も言わずに繁々と眺め、こう言った。
「玲さんの絵を、世界中に広めたい。
僕に、玲さんの才能を預けてもらえませんか?」
折末さんは、ゆっくりと首を振った。
「彼女の絵を見て、何か感じる物はありませんでしたか?」
「感じる物………よくわからないんですが、絵から気迫というか、パワーというか、大胆さや激しさを感じました。
それでいて、繊細というか、優美というか、とにかく一度見たら心から離れなくなりました」
折末さんはコーヒーを一口飲み、嬉しそうにゆっくり頷いた。
この人もきっと、初めて玲の絵を見た時に同じように感じたのだろう。
「画家にとって何が一番大事か、様々な意見があると思いますが、僕が思うに『訴えかける何か』がなければ、どんな絵でも綺麗なだけで心には残らないと思います」
「訴えかける何か……」
「創作をする人間は、絵に限らず、皆んなそうじゃありませんか?何か表現したい事や、言いたい事があるから創作する。ただ好きなだけでは絵は描けません。訴える物が強ければ強いほど、人の心を打つと………僕は思っています」
玲がシャッターに絵を描いていた姿を思い出す。
誰の言葉も耳に届かないくらいの、集中力で一気に書き上げていた。
切迫したように一心不乱に自分と絵だけの世界にいるようだった。
玲は何を思って、絵を描いていたんだろうか。
俺なんかには想像も出来ないような事を、頭に描いているのかもしれない。
「正直、玲さんはデッサン力はないかもしれません。多分今まで全部自己流で、専門の人に絵を習った事がないのかもしれない。
けれど、彼女はきっと審美眼に優れているのです。通常の人間が気づかないような、繊細な物の美しさまで、彼女には見えて、それをより美しく表現できる。それに、加えて彼女にはきっと何か世間に知らしめたい事があるんでしょう」
知らしめたいこと?玲が訴えかけたい事とはなんなんだろう。
「彼女の絵にはよく、それが現れています。
だから、人の心をうつ………。あなたが魅了されたように」
玲の絵は、俺だけじゃなくて世界中の人を夢中にさせる。そんな気がした………。
ロビーの扉が開き、熊さんと玲が入ってきた。
二人は三枚の絵を持ってきて、ロビーに並べた。
折末さんはその三枚の絵を、まるで宝物を眺めるように眺めていた。
しばらく何も言わずに繁々と眺め、こう言った。
「玲さんの絵を、世界中に広めたい。
僕に、玲さんの才能を預けてもらえませんか?」



