「小岩井 玲?それって……」

 俺は玲の方を見る。「私の絵?」玲が前に出て行く。

 「あなたが、玲さんですね?私、ネットのホームページで玲さんの絵を拝見してから、玲さんの絵に惹きつけられてしまったのです!是非一度実際に見てみたいと思って、東京から参りました」

 折末さんが頭を下げる。その姿を見て、イゾンが喜ぶ。

「玲さん凄い!画商が見にくるなんて、そんなに絵が上手だったんだ〜!流石だなぁ!」

 イゾンは、玲の絵を見た事がなかったらしい。
俺は、玲の絵を見た事があったので、プロが見に来ても、なんら不思議に思わなかった。
それくらいに、玲の絵は飛び抜けているのが素人の俺でもわかる。

 熊さんが玲に尋ねる。

「ホームページに絵をのせていたのかい?」

「少しだけね、殆どこのホテルの事だけど…」

「私、自身も画家で30年以上画商もしております。玲さんの絵を一眼見た時から思いました。これは、凄い才能だと………」

「とりあえず、玲ちゃんの絵を見せて差し上げたらどうですか?」

 カブさんがそう言って促す。

「まあ、良いけど……あんまりアトリエに人を入れたくはないんだよね」

「アトリエに入れなくても結構です。何枚かでいいのです、どうか見せて頂きたい!」

 そう言って、折末さんがまた頭を下げるので、玲と熊さんは「ロビーでお待ちください」
と言って絵を取りに行った。
俺は折末さんを、ロビーの椅子に勧めると、コーヒーを出した。

 「玲は、やっぱり絵の才能があるんですか?」

 コーヒーを出しながら、俺は折末さんに尋ねた。
プロから見て、玲の絵がどうなのか気になった。

「そうですね。あるか、ないかで言ったら、確実にあるでしょうね。彼女の絵をご覧になったことはありますか?」

 折末さんが、俺に向かって聞いてくる。

「あります。初めて、彼女のシャッターアートを見た時に、絵なんか全然わからないはずなのに、凄く感動したんです。」

 俺は、つい必死に玲の絵について語ってしまう。けれどそれくらい、玲の絵を見た時の衝撃は物凄かった
折末さんは、コーヒーを一口飲んで俺に言う。

 「画家に大切な事はなんだと思いますか?」

 突然の折末さんからの、質問に俺は頭を悩ませる……。画家に大切な事?