「それから、何年かたって、戦争が終わって処刑場もなくなって、この島は昔の様な平和な島に戻ったそうです。
処刑場があった所には何十年かして、ホテルが建てられたみたいです」

「………ホテル?」

 俺が呟くと、皆んな顔を見合わせる。

「……はい。小さなホテルが建って、観光客も来るようになったらしいんですけど、来る客、来る客、皆んな変な事を言うらしいんですよ。
『寝ていると、真夜中階段から足音がする。』
とか『ニ階の窓の外に赤い服を着た女の人がいた。』とか、、、」


玲が小さな声で「ひぃぃぃっ」と声を出す。

「他にも、身体が重くなる人がいたり、体調を崩す客が多く現れて、これは処刑場で殺された人の祟りかなんかじゃないかって、話しになったらしいんですよ。」

「イゾン……そのホテルって……」

「、、、はい。結局悪い噂がたって、客が遠のき、ホテルは潰れてしまったらしいです」

「クマ!そう言えば前に、このホテルは格安で売って貰えたって言ってなかった!?」

 俺達全員、熊さんの方を見る。無表情で、黙って話しを聞いていた、熊さんが口を開く。

「………ずっと、買いてがつかないから、ただ同然で譲りうけたんだ……」

「えーーーー!!!!完全にこのホテルじゃん!呪われたホテルじゃん!ここ!!
 なんで今まで気づかなかったんだろう!
通りで、犯罪者しかこないはずだよ!!」

 玲が熊さんに向かって叫ぶ。

「なんで、こんなホテル買ったのよ!!バカバカ!バカクマ!!早く引っ越そう!」

「まあ、まあ、只の都市伝説ですし、現に皆さん、ここでそんな心霊現象にあってないじゃないですか。大丈夫ですよ」

 カブさんが、玲をなだめる。

「そうですよ。大丈夫ですよ、玲さん。
因みに僕は、ストーカーはしましたけど、"禁止命令"だけしか出てないので、まだ犯罪者ではないですよ。今はすっかりストーカーから足も洗いましたし」

 自分が話したくせに、イゾンが腹立つフォローをする。

「でも、そう言えば、前に泊まっていたお客さん、急に夜になると、耳元で女の声がして眠れないからとか言って、急に帰っていった人いたな……。その客の頭がおかしいのかと思ってたけど、お化けの仕業だったの!?」

 玲が真っ青な顔をして言う。

「まあ、まあ、気を取り直して皆んなでお酒でも飲み直しましょう。熊さん、皆んなにワイン良いですか?」

 カブさんがそう言うと、熊さんが頷いて立ち上がる。
その瞬間、もの凄い突風が島全体を吹いた。
窓ガラスが割れるんじゃないかというくらい、大きな音をたてて揺れた。

 そして、今までついていた電気が急にふっ──と消えた。

蝋燭の火が消えるように、ホテルの中は真っ暗になった。

「無理無理無理!怖いよ!このタイミングで何で停電すんのよ!」

 玲が叫ぶ。

「熊さん!懐中電灯を!」

 カブさんが慌てて言う。

「シンジさん!助けて!」

イゾンが何故か隣にいた俺に抱きついてくる。

「辞めろよ気持ち悪いなぁ!!離れろよ!!大体お前が変な話しするから、こんな事になってるんだろうが!」

そんな事を言いながら、皆んなでワーワー言っていると、懐中電灯を沢山持った、熊さんがやってきた。

熊さんが俺達の方へ向けて、懐中電灯を照らして歩いてくる。

………その時、熊さんの後ろに動く人影らしき物が見えた。

皆んなすぐ一斉に、その人影に注目した。

「ぎゃゃゃゃゃやーーーーーー!!!!!!」


一番最初に叫んだのは、なんとカブさんだった。