「この島って島のわりに、あんまり、風が吹くイメージないよな?気温差もないし、雨も降らないし、海も荒れないし、いつも凪っていうか……」

 食事中も、強い風が吹いて、ダイニングの窓が揺れていたので、思わず俺はそんな事を口に出す。
そこで、白ワインを飲んでいたカブさんが話し出す。

 「この島は、高い山もないし、一応雨季と乾季に分かれているけど、雨季でも短い雨が短時間に降るだけだから、天候が崩れるって事は少ないみたいですよ。年間通しても、晴天率90%ぐらいあるようなんで」

 確かにカブさんの言う通り、たまに通り雨が降るくらいで、この島は基本晴ればかりだ。

「そこが気に入って、クマはここに移住したんだよね」

 玲がそう言うと、熊さんは静かに頷く。
すると、カブさんも同意するように話しだす。

「そうですね。晴れが多いと、気分も良いですしね。一年中半袖、短パンで過ごせるし、住みやすい島だから、移住したくなる気持ちもわかるなぁ」

 そんな事を皆んなで話していると、急にイゾンが話しに入ってくる。

「あの……でも僕、この島にまつわる都市伝説的な話しをネットでみたんですけど……」


「だから、あれだろ?日本の犯罪者が逃げてくる島っていう……」

 イゾンが何故か深刻そうに首を振る。

「違うんですよ!そんな事じゃなくて、この島、昔戦争があった時処刑場があった島だったらしいんですよ……」

 ここにいた全員が、そんな話しは初めて聞くらしく、イゾンに注目して話しを聞いていた。

「まぁよく聞く話しっぽいな、島流し的な?」

「この島の、丁度港から東の方に二キロ弱行った所に大きな処刑場があったらしく……」

 イゾンがそう言った瞬間皆んなが一瞬黙る。

「港から、東に二キロ弱って丁度このホテルあたりじゃない?」

 玲が言うと、カブさんも同意するように頷く。

「確かに、このホテルのあたりかもしれないですね。古い軍の倉庫みたいな建物がチラホラありますからね」

「で、それがどうしたんだよ、イゾン!」

 俺がイゾンを急かすと、イゾンは怖い話しをするように、両手をテーブルの上で組んでゆっくり話し出す。
皆んな、イゾンに注目している。
玲は怖いのか、いつのまに熊さんの横に席を移動して、ぴったりとくっついている。

 「処刑場では、結構な人数の人が、処刑されたらしいんですけど……敵だとわかれば年齢や性別構わず、殺されたらしくて、中には女性や子供も殺されていたらしいです」

 「酷いね」玲が熊さんの腕にしがみつきながら言う。

「だから、この島の土の下には何百という人間の遺体が埋まっているらしいです」

 俺は思わず、ダイニングの床を眺めてしまった。窓は風でまたカタカタと音をたてていた。