それから俺の、ホテルエアロでの生活は何日か過ぎていった。
玲には相変わらずこきを使われて、魚釣りや、ホテルの掃除、庭の剪定や草むしりなどをさせられていた。

 俺は段々と、この島やホテルにも慣れてきて、まるで長い間ここに住んでいたような気分になる時があった。
 カブさんは相変わらずゆったりとこの島で過ごしていたし、クマさんは毎日美味しいご飯を作って提供してくれた。

 玲もアトリエで絵を描いたり、ホテルの雑用を手伝っていた。
この数日で、一番変わったのはイゾンかもしれない。
イゾンは、俺が無理矢理部屋から連れ出した日から、ご飯の時は顔を出すようになった。
最初は、スープだけとか、飲み物だけを一緒に飲んで、部屋に戻っていったが、今はきちんとしたご飯を、皆んなと同じダイニングで食べられるようになっていた。

 相変わらず、玲の事が好きなようだが、玲は性格がはっきりしているので、玲が拒絶していれば、イゾンもそこまで玲にしつこくする事はなかった。

 その日の夕飯は、いつもと同じように全員でダイニングでご飯を食べていた。
この日のメニューは、海鮮のパスタに、白身魚のムニエル、ジャガイモの冷製スープと、温野菜にアンチョビのドレッシングをかけた物だった。

 熊さんの料理はこの日も美味しくて、和やかな雰囲気の中で食事は進んでいった。
ただ一つ、いつもと違うてんがあるとすれば、この日は何故か風がとても強かった。
 いつもだったら、プールのテラスで本を読んでいるカブさんも、この日ばかりは風が強いといって、中のロビーで読書をしていた。