俺はその姿を見て頭が混乱する。
机の上には違う女の写真が置いてあったから、写真の女が好きなのかと思ったけど、こいつはこの島にきて、今度は玲が好きになったのか?

「お前、次は玲にストーカーするつもりなの?」

 俺が聞くと、イゾン君は慌てて首を振る。

「そんな!そんな!ストーカーなんてそんなつもりは全くないですよ!」

「でも、いきなり後ろから抱きしめられたら、誰でもキモいと思うけど、そもそもセクハラだし。あんたかなりやばいよ?」

 イゾン君は俯いてぶつぶつ話しだす。

「僕だめなんですよ、、、女性にちょっと優しくされると、すぐに好きになっちゃって、依存しちゃって、、、。女性との距離感がわかんないっていうか、、、。あの、僕小学校三年生から二十三歳の今までずっと引きこもりだったんですよ」

「えっ?」

 そんなに引きこもりだったのに、こんな島までよく逃亡してこれたな……。

「でも、そんな自分を変えたくてマッチングアプリに登録したら、彼女ができて。嬉しくて、彼女のおかげで外に出る事も出来るようになって。彼女が女神みたいに見えたんです」

 話しだけ聞くと、とても良い話に聞こえる。
引きこもりの少年が、恋をして外の世界に出られるようになった───。

「でも、付き合っていくうちに、どんどん不安になっていって、浮気されてるんじゃないのか?他の男と一緒にいるんじゃないかって」

「そんなに自信がなかったわけね?」

「ないですよ。ずっと引きこもりですよ?顔だって別にかっこよくないし、重度のコミュ症ですし、、、今だって頑張って初対面のあなたと会話して、、、今にも倒れそうです、、、」

「そうなの?じゃあ俺ちょっともう出ていい?
自分の部屋に戻りたいんだけど」

面倒なのは勘弁だ。こいつのストーカーになったいきさつなんて、俺は全く興味はない。
俺が部屋に戻ろうとすると、イゾン君が呼び止めてくる。

「ちょっと待ってくださいよ!話しを聞いてくださいよ!」

「何なんだよ!面倒だな!違う奴に話せよ!」

「話せないんですよ!部屋から出る事もできないですし、、、いいじゃないですか、少し聞いてくれても!」

 そういってイゾンが俺の腕にしがみついてくる。一発殴ってやろうかと思ったが、ホテルを追い出されたら困るので、ぐっと我慢した。

    「五分で話終われよ」