「イゾン君?」
 俺が聞いた事のない名前に驚いて聞き返すと、玲が、ホテルの一階の奥の部屋を指差す。

「上の二部屋は、カブさんとシンジが使ってるでしょ?下にも二部屋客室があるんだよ」

「ああ、それはなんか最初に聞いたけど、俺ら以外にも客がいたのか?」

「いるの。殆ど部屋から出てこないんだけどね。若い男のお客様。名前はイゾン」

「え?なんで?なんか出られない理由があるわけ?……ってか、何人?ひょっとしてそいつも犯罪者?」

 俺が聞くと、玲が頷く。

(このホテル、まじで犯罪者しかいないんじゃねーか?大丈夫かよ………)

「食事も部屋に運んで欲しいって希望で、部屋まで運んでるの。シンジご飯持っていってよ」

「え?なんで俺が?」

 俺が不服そうに言うと、玲がすかさず俺に向かって言ってくる。

「シンジ私の部下でしょ?上司の命令は絶対だからね!」

 玲が勝ち誇った顔で言ってくる。

「なんだよそれ!えーめんどくせーな!!因みに、そいつは何の犯罪おかしたんだよ」

「ストーカーだって」

「は?」

「好きな女の子に依存し過ぎて、ストーカーしたらしいよ」

(ストーカー………へぇ、本当にそんな事するやついるんだなぁ)

 俺はなんだか感心してしまう。そして俺はある事に気がついた。

「女に依存しちゃうから、イゾン君って名前なのか?」

「そう、私がつけたの。良いでしょ!」

 随分と安易過ぎると思ったが、俺は口に出さず、キッチンへ行ってイゾン君のご飯を貰いに行った。