俺が朝食を平らげると、玲がやってきて俺に言う。

「シンジ!早く!ご飯食べて!片付けたら、買い物にいくよ」

 玲がそんな事を言って捲し立ててくるので、俺は面食らう。

「なんで、俺がそんな事しなきゃなんないんだよ!俺、客だろ?」

 俺が言い返すと、玲が俺を睨みつけて言ってくる。

「シンジ、客じゃない。
ただで泊まらせる代わりに、ホテルの事手伝わせていいって、リョウが言ってた」

 (はぁ?嘘だろ?綾さんが?)

俺がそう思って、熊さんの方を見ると、熊さんは俺を見て頷く。

(まじかよ〜面倒だなぁ。俺ホテルでなんか働いた事ないぜ)

そう思っていると、玲が嬉しそうな顔して俺を見つめて言ってくる。

「シンジ私の部下ね!」

 俺はなんだか、げんなりしてきた。
けど、宿代ただはありがたい……。
綾さんが持たせてくれたお金は、出来れば使いたくなかった。
 俺と、玲は朝食の後片付けをすませ、ホテルを出て買い物へ行く事にした。
玲が槍みたいな物とバケツを持ってきたので、俺が思わず尋ねる。

「何だよそれ、そんなの持って買い物行くのか?」

「当たり前だよ。必需品だよ」

 玲がわけのわからない返答をする。買い物にそんな物持っていく人間はいないはずだ。
海外育ちのせいなのか、玲は自由奔放というイメージだ。正直、得意なタイプの人間ではない。
 俺のそんな気持ちもお構いなしに、玲はどんどん俺に話しかけてくる。
 少し、街中の方へ入っていくと、英語表記のお店が並ぶ、日本で言う商店街のような所へきた。人もそれなりにいて、買い物をしていた。

「シンジ、服買った方がいいよ。替えの服ないでしょ?」

 玲の言う通りだった。服も持たずに俺は日本をでたのだ。

「じゃあこの店で、Tシャツと短パン買ってくよ」

 ちょうど目の前に、服屋があったので適当な服を買おうと思ったら、玲が俺に言ってくる。

「私が選ぶよ!」

「なんか、お前が選ぶと派手なやつしか選ばなさそうだから、いいや」

 俺は、玲の頭と服を眺めながら返事をする。

「なんで!明るいやつの方がいいって!
シンジただでさえ暗いのに、服まで暗くしてどうすんの?」

 俺も大概、空気を読むのは苦手だが、こいつは俺以上かもしれないと思った。