「シンジ!シンジ!」

 バカでかい声と、ドアを激しくノックされる音で俺は目が覚めた。
目が覚めると、窓の外が明るくなっていた。
 俺は一瞬自分が今何処にいるかんからなくなって、混乱した。けれどすぐに、この島へ逃亡してきた事を思い出した。
 時計を見ると八時になっていた。

(あれ?もしかして朝?あのまま俺は朝まで爆睡しちゃったのか?)

「シンジ!朝ご飯だよ!下に降りてきて!」

 玲が部屋の外で叫んでいる。
俺はこの島へきて、極度の緊張から解放されたのだろう。
安心した途端、溜まっていた疲れが一気に出てきたようだった。

 夢を見ているみたいだった………。
東京での事件も全て夢の出来事だったような気がする。
しかし、起きて窓の外を眺めると、そこにはラムネのような淡い水色の海が広がっていた。

 俺はそれを見て、これは現実なんだと実感する。
俺は、犯罪者になって海外に逃亡した……。
でも今はそんな事は考えたくもなかったので、俺はすぐにシャワーを浴びて、もやもやとした感情を吹っ切った。

 いわゆる現実逃避をする事にした。

 階段を降りて、下に行くと良い匂いがしてきた。
ロビーの先に扉があり、そこに小さいが食堂があった。
俺が中へ入っていくと、髪の毛の色が金髪から、ピンク色に変わっている玲がいた。
いきなり髪の色が変わっていたので、最初玲と気づくまでに時間がかかった。
玲は、ピンク色の髪をおだんごにして、エプロンを着ていた。

 「おはよう!シンジ!昨日の夜起こしたけど、全然起きないで、死んだように眠っていたからそのまま寝てもらったよ」

 俺が、玲の頭を眺めてポカンとしていたので、
玲がそれに気がついて言ってくる。

「ああ?私の髪色が違うから、ひょっとして、私って気づいてない?私、玲だよ」

 玲がそう言うと、食堂の大きなダイニングテーブルで朝食を食べていた、メガネをかけた、上品な日本人の中年の男が、笑いながら言ってくる。

 「玲ちゃん、一昨日は緑色だったよな?
玲ちゃんの頭の色は山の天気並に変わるからな」

「そうそう。自分でも、自分の心が全く読めないの。急に気分がころころ変わるから大変なんだよ。次の日には『なんで、こんな色にしたんだっけ?』って思っちゃうんだよね」

 玲がそんな事を言うと、食堂の奥のキッチンの方から、ニメートルくらいはありそうな、大きな男がぬっと現れた。