声がどんどん大きくなる。

(……なんだ?何て言ってるんだ?)

 俺は寝ぼけた頭で考える。

「泥棒〜強盗〜!何処にいるの〜」

 俺はそのセリフに慌てて飛び起きた。日本語だ!しかも泥棒って、まさか俺の事か!?
 声のする方を振り返ると、そこには金髪の白い肌をした、若い女の子がいた。
 目が合うと、その女の子は大きな目を見開いてこっちを見る。

 「いたーーーー!!泥棒!!!」

彼女は、また日本語で大きな声で叫ぶ。

(嘘だろ…なんでばれてるんだ…)

 俺が思わず慌てて逃げようとしたら、彼女がなんだかよくわからない木の実みたいな物を俺に投げつけてきた。
それが、俺の背中に命中して、俺は思わずうずくまる。

───いてぇ、、、、。

 木の実を見ると、ヤシの実のような硬い大きな実だった。彼女はいつの間にか俺の目の前に立っていた。

 「なんで逃げるの?やっと見つけた!中々こないから島中を探したんだから!」

 どうやら、彼女は日本人の様だった。
こんなに一年中温かい気候の島なのに、彼女の肌は透けるほど白かった。
目はくりっとして大きく、長いまつ毛が伸びていた。歳は、高校生から大学生くらいだろうか?

 しかし、その白髪に近い金髪と白い肌で、彼女は現実離れした、アニメのキャラクターのようで、年齢不詳に見えた。

「あぶねーだろ!こんな硬い木の実なげつけたら!!何考えてんだよ!」

 俺は、思わず逃げるのを忘れて怒鳴りつける。

「君、逃げるからでしょ?何処にいくつもりよ。このくらいの木の実交わさないでどうするの?さぁ!早く帰るよ!」

そう言って彼女は、また木の実を上に投げてキャッチする。

………帰る?何処へ?

「いや、お前は誰だよ?」

「私?私は玲《れい》、君の名前は知ってる。
シンジでしょ?」

「……何で俺の名前知ってるんだ…?」

 俺は驚いて思わず彼女の顔を二度見する。
こんな島に知り合いがいるはずはない。

「君、リョウに言われなかった?島に着いたらホテル『エアロ』に行けって。
私は、ホテルのオーナーの娘。君を迎えに行くように言われたの」

リョウって…綾さんか?
そう言えば、綾さんにそんな事言われた気がした。

『ホテルエアロを頼れ。』

 俺は何となく海を見ると、海は夕日で真っ赤に染まっていた。
俺は思わず「すげー」と声にだした。
現実とは、思えないような素晴らしい景色だった。
夕日が海に沈み、オレンジがブルーの海を綺麗に染めていく。
俺が感動して、海を眺めていると玲が俺に向かって笑いながら握手をしてくる。


    「シンジ、逃亡成功おめでとう」