俺は、今までの出来事を全て綾さんに話した。　
バンドが上手くいかなくなった事、その後は何もせずにブラブラしていた事。
金がなくなった所に、ルキアから電話がきてバイトの話しを持ちかけられた事。
そのバイトが組織的グループの強盗で、一人暮らしの老人の家に盗みに入った事、ルキアがその老人を殴り倒した事。

　全て隠さずに話した。
綾さんは、黙って俺の話しを聞いていた。
俺が話し終わると、綾さんはタバコをまた一本吸って大きなため息をつく。

　「ルキアには近づくなって、あれ程言ってたの忘れたのかよ？あいつはただの薬中じゃねーよ。頭のねじ一本飛んでんだよ」

　俺は今更後悔しても仕方ないが、あの時はルキアの話しに乗るしかないと思っていた。
綾さんが携帯を取り出して、何かを見ている。
そして俺の方へ携帯を見せてくる。

　「ルキア、捕まったな」

　事件は携帯のニュースで速報になっていた。
俺はそのニュースを見て心臓がバクバクしてきた。

　ニュースの内容はこうだった。

[東京郊外の一軒家に強盗が押し入った。
現金や貴金属を盗みに入った男が、現行犯逮捕された。
家の中には口から血を流している男性が発見され、この家の主の宮崎　龍雄さん(86)と思われる。
直ぐに病院に運ばれ重体という事だ。
強盗は三人グループで行われたようだが、二人は逃走中で行方がわからなくなっている。
近頃、同じ様な手口の強盗が多発しており、組織的なグループの犯行と見られる。
警察は逃げた犯人二人の行方を追っている]


　真っ青な顔をして呆然と携帯のニュースを見ている俺に綾さんが言ってくる。

「真二、お前が捕まるのも時間の問題だぞ」

　ルキアが俺の情報を既に警察に教えているだろう。こうしている間にも、警察は俺の行方を探しているはずだ。
綾さんの言う通り、時期に俺も捕まるだろう。
俺は身体中からあぶら汗をかいて、息苦しくなってくる。

　もうどうする事も出来ない。大人しく捕まるしかない。

俺が頭を抱えていると、綾さんが俺に言った。



　　　　　　「真二、逃げろ」