俺はそんな生活を半年以上繰り返していた。
本当にまずいなと思ったのは、家賃の滞納で強制退去の通知がきた時だ。

 パチンコですって、お金はほぼ底をついていた。

 中野の激安五万のこの古いアパートを追い出されたら、本当に行く所なんてない。
もう少し働かないとまずいという焦りが、やっと自分の中で芽生えた瞬間だった。

 気づけば六畳一間の部屋の中も荒れていた。
タバコの吸い殻は山のように積み上げられ、
そこらじゅうに、ペットボトルのからや空き缶が転がっていた。
俺は久しぶりに空気の入れ替えをしようとして
窓を開けた。

 もう直ぐ春になるが、冷たいひんやりとした風が部屋の中に入ってくる。
それだけで部屋の中の空気が一変した。
俺はベッドに腰かけてTVをつけた。
 その後ゴミ袋にゴミを分別して捨てていく。
いらないDMもかなりの量が溜まっていたので破って捨てていく。

 その時テレビの夜のニュースで、人気アイドルグループに属していた男が、グループを脱退して新しいバンドを結成したというニュースが流れた。
 俺は何気なく目に入ったそのニュースを見て、身体が動かなくなった。

 そして、捨てようとして手に持っていたペットボトルを思わず床に落とした。
ペットボトルは軽い音をたてて、フローリングの床を転がっていった。

 アイドルの後ろで、楽器を弾いていたのは、よく知っている俺が所属していた、バンドの元メンバー達だった。
光輝が言っていた、他のバンドに引き抜かれ、メジャーデビューが決まったと言う話しは、このバンドの事だったのか……。

 俺の元バンド仲間は、生き生きとスポットライトを浴びて楽器を演奏していた。
………俺が死ぬ程望んでいた舞台で楽しそうに思いっきり演奏していた。



「なんだよ、、、これ……」



 俺は、憎しみや嫉妬と怒りというような感情が胸の奥底からフツフツと湧いてきて抑えきれなくなっていた。

 その時、衝動的に目の前にあったグラスを思いっきりテレビに向かって投げつけた。

 グラスは物凄い衝撃音と共にテレビに当たって割れた。

テレビにも大きなひびが入り、画面がぐちゃぐちゃになった。

 そんな事はどうでも良かった。
俺は声にならない声を出してうずくまった。



、、、なんで、こんな事になった。


 あいつらをインディーズで有名にしたのはこの俺だ。
俺の作った曲のおかげで、バンドは人気になって、あいつらも少し有名になったから、レコード会社に目をつけてもらえるようになったのに。


 なのに、、、なのに俺はなんでこんな汚い部屋で、音楽を辞めてみすぼらしい生活をしているんだ。
何故、俺じゃなくてあいつらがスポットライトを浴びているんだ、、、。


 誰がこんな事をした。


 俺の人生を誰がこんな風にしたんだ、、、。



母親か?名前だけ付けて、俺を捨てた父親か?


俺を馬鹿にしていじめた同級生か?


厄介者にした教師か?


バンドのメンバーか?


この世の中の全てか?


俺は生まれた時からババを引く運命なのか──


ふと見ると、俺のギターは埃が溜まり、ぐちゃぐちゃになった服が被さっていた。