「僕、この島へ来てシンジさんに出会って
初めて変われた気がするんですよ。
 僕を無理矢理あの小さな部屋から出してくれて、本当に感謝しています。
この恩は一生忘れないですし、僕は一生シンジさんについていきます」

 イゾンが深々と俺に頭を下げる。本当にこいつは根っからの依存型だ。
女でも男でも関係ないんだなと思った。

 「一生ついてこられても困る。どうせストーカーされるなら、可愛い女の子の方がいいわ」

 「なんて事言うんですか!玲さんに言いつけますよ!あんなに可愛い彼女がいるのに!
言っときますけど、僕の方が先に、玲さんを好きだったんですからね!」

「そういや、そうだったな。悪いな、イゾン」

 初めて出会った時、イゾンは俺を玲だと勘違いして抱きついてきたんだ。

 「悪いな。じゃないですよ、本当に!でも、、、熊さんは大丈夫なんでしょうか。玲さんが東京へ行く事」

 イゾンの表情に不安が広がる。
この間の熊さんの様子じゃ、勝手に東京なんて行ったら勘当する勢いだった。

 「大丈夫では、ないだろうけど、熊さんにもちゃんと話そうと思うよ。やっぱり勝手に行く事はできないと、俺は思ってるから」

 「そうですね。たった一人の大事な娘ですもんね。熊さんは自分の人生をかけて、この島で玲さんを育ててきたんだなぁって思いますもん」

イゾンの言う通りだ。
無口だからわかりづらいが、熊さんは愛情深い人間だ。
いくら娘の為とはいえ、知らない島に移住までしてくるなんて、普通はなかなかできない事だ。
 熊さんのおかげで、玲はこの年齢まで生きてこられたと言っても過言ではない。
俺は、今日の夜、熊さんに話しをしようと思っていた。