玲は俺が一緒に東京へ行く事は納得していない様子だった。
 けれど、俺の気持ちは揺らぐ事はなかった。
玲は熊さんに内緒で、東京へ行こうとしていた。
 話し合ってもお互い分かり合う事は出来ないと、諦めたようだった。

 けれど、俺は熊さんに黙って島を出る事はしたくなかった。
熊さんには、この島で世話になったし、弟の綾さんにも恩がある。
きちんと礼を言ってから、島をでたかった。

 そして、もしもの事を考えたら、玲が突然いなくなるような別れ方をして欲しくなかった。
だから、俺は全てを熊さんに言おうと思っていた。

 「え?本当に言ってるんですか?」

 イゾンが驚いたように、俺の方を向いて言ってくる。
港で二人で釣りをしながら話している時に、イゾンにも島を出る事を打ち明けた。

「あぁ二人で島を出る。まあ、玲はすぐ帰ってくるけど、俺は、、、」

 それだけでイゾンは察したように、悲しそうな表情をする。しかし、直ぐに笑顔になった。

 「シンジさん。またきっと会えますよね」

 「なんだよ。わかんねーよ。会えるかもしれないし、会えないかもしれないし。お前はどうすんだよ」

 「僕もそろそろ未来について考えているんです。今まではずっと引きこもりで、お金には困る事はないし、一生このまま引きこもって行くと思ってたんですけど」

 今じゃ、イゾンは引きこもり所か、かなりのアウトドアだ。
 本来のイゾンはこちら側の人間で、環境がイゾンを引き篭もらせていただけのように思う。
きっかけだけあれば、本来何処でもやっていける人間なんだろう。
 最初は、どうしょうもないやつだと決めつけていたが、今となっては、俺はイゾンの事を心から尊敬している。