後宮妃は木犀の下で眠りたい

 ……自白したのも同然だと気づいていないのか。

 香月は口を閉ざした。

 必要ならば尋問をすることも考えていたのだが、藍洙には尋問を行う価値もない。昭媛とは思えないほどに知識がなく、後宮で生き残る術もまともに知らない。なにもかも、侍女の思い通りになっていると藍洙は気づいてもいないだろう。

 ……手紙と同じ展開になったな。

 価値がないと判断し、燃やしてしまうように指示をした手紙には、藍洙が茶会の席で罪を自白するという内容が書かれていた。それは藍洙の背後に控えていながらもなにもしない陽紗から送られてきた手紙だった。

 藍洙は手紙の内容を把握していない。

 それは侍女がなにをしているのか、まったく、把握していないのも同然だ。

「翠蘭の時にはうまくいったのに!」

 藍洙は取り乱していた。

 自分に都合が悪い状況になっていることは理解しているものの、それを上手く処理することができない。

 ……精神汚染の影響が視えるな。

 香月は藍洙の状態を把握する。

 気の流れを読めば、相手の精神状態の異常がわかる。しかし、それを治す術を香月は習得していなかった。

 ……呪術の影響か。

 自らを守る術を知らず、呪術に手を染めるのは多くの代償が伴う。

 呪術は代償が伴うことが大前提であるからこそ、多くの人々が忌み嫌う。自らの気功使う仙術や道術とは違い、外道な手段とされているのは術者の払う代償が大きすぎるからだろう。

 藍洙はそれを知らなかった。

 だからこそ、以前よりも思考回路がまともではない。思い込みは日に日に激しくなり、手段を選ぶことができなくなっている。他人に利用されていることにも気づかず、自分だけは特別なのだと信じ切っていた。

「黄昭媛」

 香月はうまく笑いかけることができなかった。

「貴女は、翠蘭姉上は自害に追い込んだのか?」

 香月は問いかける。

 それに対し、藍洙の形相が険しいものに変わった。

「それがどうしたっていうのよ。あんなお飾りは陛下にふさわしくないわ」

 藍洙は認めた。それは香月にとっても想定外だった。