翌日、香月は後悔をすることになる。
孫家に送り返した小鈴は命を落とした。
自ら命を絶てば、両親や親族へ与えられる罰を軽くなると考えたのだろう。そのような考えは玄家の人間を相手には通用しないということさえも、小鈴は理解をしていなかった。
その知らせを聞いた香月は思わず顔をしかめた。
殺さずに家に帰したことを後悔した。
自ら命を絶つとは思ってもいなかったのだ。
自身の考えの甘さを悔やんでいた。
「――明明。報告ご苦労だった」
香月は淡々とした声で告げる。
感情を露にはしない。
それは敵の多い後宮で弱味を晒すわけにはいかなかったからだ。
「賢妃様、追加で文を送りましょうか?」
雲婷の提案に対し、香月は首を左右に振った。
「必要ない。玄家に頼るのは侍従の補充だけで十分だ」
香月は両親に文を送った。
早急に両親に届けるようにと言付けをしたものの、玄家に届くまでに一週間以上はかかるだろう。
武功や気功の扱えない人にとって、急ぐ手段といえば馬になる。たとえ、馬の疲労を考慮せずに走らせたところで届く日数は大きく変わることはない。
「黄昭媛から茶会の誘いが来ていたな」
香月は本日の午後に茶会を行いたいという手紙を目にした時のことを思い出しつつ、呟いた。香月の身支度を整えている雲婷の表情が曇る。
本来、目下の者から茶会に誘うなどありえない。
香月は四夫人の一人であり、藍洙は九嬪だ。その壁は分厚く、簡単に乗り越えていいものではない。
藍洙がなにを企んでいたとしても、四夫人の座は四大世家から選ばれるものと決められており、それが覆る日は来ないだろう。
「はい。玄武宮にて執り行うと返事をしました。しかし、無礼者を出迎える必要があるのでしょうか」
梓晴は首を傾げながら、問いかけた。
場所と時間の指定はされていなかった為、返信の際に確実に伝えた。丁寧に文まで渡したのだ。それを無視するのならば、二度と藍洙が香月に謝罪をする機会は与えられないと忠告まで添えてあった。
孫家に送り返した小鈴は命を落とした。
自ら命を絶てば、両親や親族へ与えられる罰を軽くなると考えたのだろう。そのような考えは玄家の人間を相手には通用しないということさえも、小鈴は理解をしていなかった。
その知らせを聞いた香月は思わず顔をしかめた。
殺さずに家に帰したことを後悔した。
自ら命を絶つとは思ってもいなかったのだ。
自身の考えの甘さを悔やんでいた。
「――明明。報告ご苦労だった」
香月は淡々とした声で告げる。
感情を露にはしない。
それは敵の多い後宮で弱味を晒すわけにはいかなかったからだ。
「賢妃様、追加で文を送りましょうか?」
雲婷の提案に対し、香月は首を左右に振った。
「必要ない。玄家に頼るのは侍従の補充だけで十分だ」
香月は両親に文を送った。
早急に両親に届けるようにと言付けをしたものの、玄家に届くまでに一週間以上はかかるだろう。
武功や気功の扱えない人にとって、急ぐ手段といえば馬になる。たとえ、馬の疲労を考慮せずに走らせたところで届く日数は大きく変わることはない。
「黄昭媛から茶会の誘いが来ていたな」
香月は本日の午後に茶会を行いたいという手紙を目にした時のことを思い出しつつ、呟いた。香月の身支度を整えている雲婷の表情が曇る。
本来、目下の者から茶会に誘うなどありえない。
香月は四夫人の一人であり、藍洙は九嬪だ。その壁は分厚く、簡単に乗り越えていいものではない。
藍洙がなにを企んでいたとしても、四夫人の座は四大世家から選ばれるものと決められており、それが覆る日は来ないだろう。
「はい。玄武宮にて執り行うと返事をしました。しかし、無礼者を出迎える必要があるのでしょうか」
梓晴は首を傾げながら、問いかけた。
場所と時間の指定はされていなかった為、返信の際に確実に伝えた。丁寧に文まで渡したのだ。それを無視するのならば、二度と藍洙が香月に謝罪をする機会は与えられないと忠告まで添えてあった。



