「皇帝陛下がお越しになられました」
皇帝、李 俊熙に付き添っている宦官の簡易的な挨拶の声がした。
その声に従い、寝室の扉が開けられる。香月の意思を確認することはない。
俊熙が訪ねてきたのだ。決定権はすべて皇帝が持っている。
「陛下。ご厚意に感謝いたします」
香月は最敬礼をする。
四夫人の一角とはいえ、後宮の所有者は皇帝である。最大限の礼を尽くすのが当然の振る舞いだった。
「挨拶はいらん。さっさと座れ。それから、賢妃以外の者はすべて退席しろ」
俊熙は慣れたように指示をだす。
それに歯向かう者など誰もいない。雲婷たちも例外ではない。
香月に対し、心配そうな視線を向けつつも、皇帝の反感を買わないように速やかに退室した。
香月以外はすべて寝室の外に出たことを確認し、俊熙は当然のように木製の台座に触り心地のこだわった絹で作られた寝具に座る。
……本気で夜伽に来たわけではないだろうな。
座る場所などいくつも用意されている。
香月は皇帝が座っている寝具の近くに用意しておいた椅子に座った。その様子を皇帝は無言で見つめていた。様子を伺っているだけなのか、それとも、香月の真意を見極めようとしているのかもしれない。
「翠蘭と似ていないな」
俊熙の言葉に対し、香月は軽く頭を下げた。
表情を見られるわけにはいかなかったからだ。
「はい。陛下。翠蘭姉上とは母親が違いますので、姉妹とはいえ、あまり似てはおりません」
香月は速やかに返事をした。
しかし、その答えが正しかったのか、わからない。
……翠蘭姉上は寵愛を受けていないはずではなかったのか?
事前に得ていた情報と違う。
翠蘭は後宮入りをした際の挨拶で酷い失態をした。その夜には俊熙が玄武宮を訪ねて来たものの、夜伽は行われず、十分程度の会話をしただけだと伝わっている。
……交流だけはあったのか?
その真偽を確かめる術はない。
しかし、それ以降、玄武宮に俊熙が足を運ぶことがなかったのは事実だ。
皇帝、李 俊熙に付き添っている宦官の簡易的な挨拶の声がした。
その声に従い、寝室の扉が開けられる。香月の意思を確認することはない。
俊熙が訪ねてきたのだ。決定権はすべて皇帝が持っている。
「陛下。ご厚意に感謝いたします」
香月は最敬礼をする。
四夫人の一角とはいえ、後宮の所有者は皇帝である。最大限の礼を尽くすのが当然の振る舞いだった。
「挨拶はいらん。さっさと座れ。それから、賢妃以外の者はすべて退席しろ」
俊熙は慣れたように指示をだす。
それに歯向かう者など誰もいない。雲婷たちも例外ではない。
香月に対し、心配そうな視線を向けつつも、皇帝の反感を買わないように速やかに退室した。
香月以外はすべて寝室の外に出たことを確認し、俊熙は当然のように木製の台座に触り心地のこだわった絹で作られた寝具に座る。
……本気で夜伽に来たわけではないだろうな。
座る場所などいくつも用意されている。
香月は皇帝が座っている寝具の近くに用意しておいた椅子に座った。その様子を皇帝は無言で見つめていた。様子を伺っているだけなのか、それとも、香月の真意を見極めようとしているのかもしれない。
「翠蘭と似ていないな」
俊熙の言葉に対し、香月は軽く頭を下げた。
表情を見られるわけにはいかなかったからだ。
「はい。陛下。翠蘭姉上とは母親が違いますので、姉妹とはいえ、あまり似てはおりません」
香月は速やかに返事をした。
しかし、その答えが正しかったのか、わからない。
……翠蘭姉上は寵愛を受けていないはずではなかったのか?
事前に得ていた情報と違う。
翠蘭は後宮入りをした際の挨拶で酷い失態をした。その夜には俊熙が玄武宮を訪ねて来たものの、夜伽は行われず、十分程度の会話をしただけだと伝わっている。
……交流だけはあったのか?
その真偽を確かめる術はない。
しかし、それ以降、玄武宮に俊熙が足を運ぶことがなかったのは事実だ。



