手術の日が近づいて、七奈は精神的に不安定な日があった。
ある日は、絶対に病気を治すと前向きな日もあれば「死ぬのが怖い」と恐怖で悲しみにくれる日もあった。
その度に俺は気を紛らわすように、"今日"の話しだけをした。
現実逃避が出来るような、笑える映画を二人で見たり、何回戦でも耐久ウノをしたり、それでも気分がのらない日は、二人でただ何も話さずに手をつないで屋上でぼーっとしたり、何が七奈にとって正解かわからなかったが、とりあえず俺が側にいたいから側にいた。
俺は不思議と、七奈を支えたいと思っていると自分の身体の不調を感じなかった。
もちろん、身体の怠さや頭が痺れるような辛い痛さはあったが、あまり苦に感じなかった。
そして、手術当日の日になった────
ストレッチャーに乗せられた七奈に向かって俺は言った。
「待ってるから、必ず戻ってくるんだよ」
七奈の手が震えていたので、俺はぎゅっと握った。
「七奈、絶対に大丈夫だから」
七奈の母親が声をかけると、主治医が静かに力強く言った。
「必ず、七奈ちゃんを助ける為に全力をつくします」
「信じて待っていてくださいね」
宮下さんも俺達にそう告げた。
「私はラッキーセブンだから大丈夫」
七奈は少し笑って手術室の中へ入って行った。
十何時間もかかる、かなり大変な難しい大掛かりな手術だった。俺は自分の治療もあったが、それどころじゃなくて、気が気じゃなかった。冗談じゃなく、恐怖で足がガタガタと震えた。治療が終わって一旦部屋に戻ると、俺のベッドの机に水色の封筒が置いてあった。
俺はすぐに七奈からの手紙だと気がついた。
いつの間に七奈が俺の机に置いていたようだった。俺は封筒から便箋を抜いて手紙を読んだ。
"永斗へ
永斗が、今この手紙を読んでいるという事は、私が手術を受けていると思います。
永斗はきっと心配で、落ち着かないと思うので、手紙を書く事にしました。
私は永斗と出会って今日までの事を思い返していました。
病気になって絶望の暗闇の中にいた私に、永斗は沢山の光を見せてくれましたね。
神様は、私にこんな酷い病気を与えながら、永斗との出会いという最高のプレゼントを与えたりして、とても意地悪だと思いました。
私は"生きること"について、深く考えて、向き合う事にしました。
私はまだまだ、この世に生きてやりたい事や、伝えたい事が沢山あります。
今のままじゃ、私の生きた意味を何も残せていないと思うのです。
だから、貪欲にも私は生きたいと強く心から思っています。例え、助かる確率の低い手術だとしても、死ぬのを待つより、可能性にかけたいんです。
もし、手術が終わっても私が眠ったまま起きなかったら、起こしてもらえませんか?
大きな声で『七奈!朝だよ!』って、永斗に起こして欲しいんです。そうしたらきっと、私は『よく寝た!』って永斗に笑いかけるから。
お願いだよ?
大好きだよ!永斗。 七奈"
七奈は、心から"生きる"と強く思っていた。
その思いが必ず届くと、俺は自然にそう思った。
死ぬわけないと、強く思える事が出来た。
その途端に、俺は心配と不安で押しつぶされそうな心がすーっと楽になるのを感じた。
まだ絶対に終わっているはずがないのに、俺は手術室の方へ歩いていった。
薄暗い手術室のドアの上の赤いランプだけが明るく光っていた。
その前のベンチに見た事のない男の人が座っていた。白髪混じりの髪を一つに縛ってかっこいいワイルドな感じの男性は、固く手を握って祈っていた。
俺はその人を見た瞬間に、七奈の父親だとすぐにわかった。
何故なら目元が七奈にそっくりだったからだ。その人は神に祈りを捧げるように必死に願っていた。
その姿を見て俺は、この人は七奈の事をちゃんと愛しているんだと思った。
手術が終わったのは、もう日が暮れて夜になった頃だった。
手術が無事終わった知らせを聞いた時は、七奈の母親と、俺の親父も心配で来ていたので泣いて喜んだ。
主治医は汗でびっしょりの手術着を着たまま「大丈夫です。無事終わりました」と疲れの色を見せながら俺達に言った。
宮下さんも泣きながら喜んでいた。こんな幸せな日は二度とないくらいに、嬉しかった。
七奈が頑張ってくれた事が嬉しくて、全てに感謝したい気分だった。
泣き崩れる俺を親父が抱き寄せた。そして親父も泣いていた、、、。
ある日は、絶対に病気を治すと前向きな日もあれば「死ぬのが怖い」と恐怖で悲しみにくれる日もあった。
その度に俺は気を紛らわすように、"今日"の話しだけをした。
現実逃避が出来るような、笑える映画を二人で見たり、何回戦でも耐久ウノをしたり、それでも気分がのらない日は、二人でただ何も話さずに手をつないで屋上でぼーっとしたり、何が七奈にとって正解かわからなかったが、とりあえず俺が側にいたいから側にいた。
俺は不思議と、七奈を支えたいと思っていると自分の身体の不調を感じなかった。
もちろん、身体の怠さや頭が痺れるような辛い痛さはあったが、あまり苦に感じなかった。
そして、手術当日の日になった────
ストレッチャーに乗せられた七奈に向かって俺は言った。
「待ってるから、必ず戻ってくるんだよ」
七奈の手が震えていたので、俺はぎゅっと握った。
「七奈、絶対に大丈夫だから」
七奈の母親が声をかけると、主治医が静かに力強く言った。
「必ず、七奈ちゃんを助ける為に全力をつくします」
「信じて待っていてくださいね」
宮下さんも俺達にそう告げた。
「私はラッキーセブンだから大丈夫」
七奈は少し笑って手術室の中へ入って行った。
十何時間もかかる、かなり大変な難しい大掛かりな手術だった。俺は自分の治療もあったが、それどころじゃなくて、気が気じゃなかった。冗談じゃなく、恐怖で足がガタガタと震えた。治療が終わって一旦部屋に戻ると、俺のベッドの机に水色の封筒が置いてあった。
俺はすぐに七奈からの手紙だと気がついた。
いつの間に七奈が俺の机に置いていたようだった。俺は封筒から便箋を抜いて手紙を読んだ。
"永斗へ
永斗が、今この手紙を読んでいるという事は、私が手術を受けていると思います。
永斗はきっと心配で、落ち着かないと思うので、手紙を書く事にしました。
私は永斗と出会って今日までの事を思い返していました。
病気になって絶望の暗闇の中にいた私に、永斗は沢山の光を見せてくれましたね。
神様は、私にこんな酷い病気を与えながら、永斗との出会いという最高のプレゼントを与えたりして、とても意地悪だと思いました。
私は"生きること"について、深く考えて、向き合う事にしました。
私はまだまだ、この世に生きてやりたい事や、伝えたい事が沢山あります。
今のままじゃ、私の生きた意味を何も残せていないと思うのです。
だから、貪欲にも私は生きたいと強く心から思っています。例え、助かる確率の低い手術だとしても、死ぬのを待つより、可能性にかけたいんです。
もし、手術が終わっても私が眠ったまま起きなかったら、起こしてもらえませんか?
大きな声で『七奈!朝だよ!』って、永斗に起こして欲しいんです。そうしたらきっと、私は『よく寝た!』って永斗に笑いかけるから。
お願いだよ?
大好きだよ!永斗。 七奈"
七奈は、心から"生きる"と強く思っていた。
その思いが必ず届くと、俺は自然にそう思った。
死ぬわけないと、強く思える事が出来た。
その途端に、俺は心配と不安で押しつぶされそうな心がすーっと楽になるのを感じた。
まだ絶対に終わっているはずがないのに、俺は手術室の方へ歩いていった。
薄暗い手術室のドアの上の赤いランプだけが明るく光っていた。
その前のベンチに見た事のない男の人が座っていた。白髪混じりの髪を一つに縛ってかっこいいワイルドな感じの男性は、固く手を握って祈っていた。
俺はその人を見た瞬間に、七奈の父親だとすぐにわかった。
何故なら目元が七奈にそっくりだったからだ。その人は神に祈りを捧げるように必死に願っていた。
その姿を見て俺は、この人は七奈の事をちゃんと愛しているんだと思った。
手術が終わったのは、もう日が暮れて夜になった頃だった。
手術が無事終わった知らせを聞いた時は、七奈の母親と、俺の親父も心配で来ていたので泣いて喜んだ。
主治医は汗でびっしょりの手術着を着たまま「大丈夫です。無事終わりました」と疲れの色を見せながら俺達に言った。
宮下さんも泣きながら喜んでいた。こんな幸せな日は二度とないくらいに、嬉しかった。
七奈が頑張ってくれた事が嬉しくて、全てに感謝したい気分だった。
泣き崩れる俺を親父が抱き寄せた。そして親父も泣いていた、、、。



