秋頃になると、七奈は気持ちを固めたようで成功する確率が低くかったとしても、手術をする事に決めていた。
 ただ、予約がいっぱいで早くても来年にならないとその手術は、受けられなかった。
 七奈は、気持ちを固めても不安な日々を送っていたし、俺も、七奈にもしもの事があったらどうしようと不安だった。
 けれど、七奈が必死で自分で決めた人生の選択を、俺は応援するしかないと思っていた。

 俺が病室から屋上を眺めると、七奈と翔也が二人で話していた。あれから、美優がお見舞いに来なくなって、七奈は寂しそうにしていたが、翔也は定期的に七奈のお見舞いに来ていた。
 小学校からの幼馴染と聞いていたが、俺の目から見ても、翔也は絶対に七奈の事が好きだった。二人でいる所を見ると、俺はチリチリ胸が痛かったが、気になって見ずにはいられなかった。

 翔也に向かって笑っている七奈を見ると、心の中で『他の男に笑うなよ』と嫉妬していた。
けれど、七奈にそんな事を直接言うのは恥ずかしかったので、何も言う事はなかった。
 何となく気持ちがもやもやして、ティールームに飲み物を買いにいくと、帰りにばったり翔也と会ってしまった。俺達は気まずさと、お互いに相手に対する嫉妬心で、しばらく何も言えなかった。初めに口を開いたのは翔也だった。

 「俺、ずっと七奈の事が好きでした。ってか今も好きです。付き合ってるみたいだけど、諦める気ないんで」

翔也はそう言って、俺に鋭い視線を送った。

 「無理だよ。譲る気ない」

俺が短くそう言い放つと、翔也は俺の発言に怒ったのか、俺に言った。

 「自分勝手に好きになって責任とれるんですか?」

翔也の言葉に俺は言葉を失くした、、、。

 、、、責任?


 「あなた病気ですよね?七奈より先に死なないって言えるんですか?無責任じゃないですか?勝手に好きになって、七奈を悲しませるなんて」

何も言葉を返せなかった。確かに、俺は無責任かもしれないと思った。
翔也の言う通りだと思った。七奈を悲しませるかもしれない、、、。
それでも、手を遅れだった、今更もう引き返す事なんて出来ないと思っていた。