夏が来て、俺の一時退院が終わって俺はまた入院した。
 けれど、ちっとも嫌じゃなかったのはもちろん七奈がいたからだった。
 
 親父が「夏といえばスイカ割りだ」と言い張り、屋上でスイカ割りをする事になった。
宮下さんに何とか許可をとり、親父と七奈と三人でスイカ割りをした。

 「やっぱり夏と言えば、スイカだよなぁ!
スイカ割らなきゃはじまんねーよ!なっ!永斗!」

親父は一人でテンションが高かったが、俺はわざわざ割らなくてもいいと思っていた。

 「永斗パパ!私一番初めにやっていい?だって私が一番割る確率が低いよ?」

 七奈も意外にのりのりで、スイカ割りをしていた。

 「いいぞ!七奈ちゃん!思いっきりやれ!ああ、もうちょい、右、右!そのまま真っ直ぐ、そこだ!いけ!」

親父がでかい声で言うと、七奈がバットを上から振りかざした。
七奈の振りかざしたバットは、スイカに命中して、なんと一発で割れてしまった。
 俺も、親父もまさか一発で終わると思わなくて、呆気に取られた。
 目隠しを取った七奈も信じられないようにスイカを眺めていたが「やった〜!!」と喜んでいた。

 親父は少し物足りなくて寂しそうだったが「七奈ちゃん!ナイス!流石だな!」と言って七奈とハイタッチしていた。
 スイカ割は早々に終了して、流石にこんな量のスイカを三人で食べる事は出来ないので、親父が切ってナースステーションに差し入れに行った。
 俺と七奈は残って屋上でスイカを食べた。

「ねぇねぇ、永斗、永斗パパって本当に良いパパだよね」

「そう?いつもテンション高くてうるさくない?」

七奈は親父に懐いていて、いつも親父が面会にくると喜んでいた。

 「そうかなぁ。あんな明るくて楽しいパパ羨ましいなぁ。私、自分の父親の顔もしらないからさ、父親ってどんなものだかわからないんだよね」

「会いたいの?お父さんに」

七奈はスイカを持ったまましばらく考えていた。

 「会いたい、、、かも?私の事どんな風に思ってるか聞きたいかな?会った事もないけど、私ファザコンなのかも」

「ファザコン?」

「うん。見た事ないからこそ、勝手に自分の中で妄想が膨らんじゃってね?かっこいいパパならいいなぁ〜とか、、、私の事好きでいてくれたらいいなぁって、、、きもい?」

「いや?きもくないけど?」

「嘘、ちょっときもいって思ってるでしょ?」

「思ってないって!」 俺が否定しても七奈は「ほんとかな〜」と言ってスイカを食べていた。

 「お〜い!!スイカの種飛ばし競争開催するぞー!!」

帰ってきた親父がいきなり俺達に叫んできた。