それから俺達は屋上でよく会うようになっていた。どちらかが、病室から屋上にいる事に気がつくと、すぐに屋上に出て話しに行った。
お互い入院生活は暇だったし、何より歳の近い人間と話す事がなかったから、七奈と話せる時間は貴重で楽しかった。
俺達は『病気』と言う、共通点があるからか、すぐに距離を縮めていった。
俺は病気の事で気を塞いでいたが、彼女は逆に病気になった事に怒っているようだった。
「何読んでるの?」その日も屋上で本を読んでいると七奈がやってきて聞いてきた。
「親父が持ってきた本だよ。いくら読んでもおもしろくならないんだよ」
俺が七奈に本を渡すと七奈は、その本を見て言った。
「私もこれ読んだよ。あんまり面白くなかった。永斗に私のおすすめの本貸してあげる!私本読むの大好きなの!」
彼女は俺にそう言うと、自分の好きな本を俺に貸してくれた。親父が持ってくる本はつまらなくて全然読み進める事が出来なかったのに、七奈が貸してくれる本は面白くて、すぐに読んでしまった。
「七奈が貸してくれる本、本当に外れがないんだけど。この間貸してくれた本なんてめちゃくちゃ最後までドキドキしたよ」
「面白かった?最後の最後でどんでん返しがあっていいんだよね?書いた人本当に天才だと思う」
俺達がそんな事を話していると、空から雨粒が落ちてきた。もうすぐ梅雨の時期になるのだ。
屋上だと屋根がないから、雨の日は七奈と話せなかった。
俺達は屋上の扉から中へ入ると空を見上げた。
「あーあ、、、雨止まないかなぁ」
七奈が呟いた。俺も残念な気持ちで空を見上げた。俺はもう少し、七奈と一緒にいたくて七奈に言った。
「七奈、ティールームに行こう。もう少し話したい」
七奈は、ぱっと明るい顔になって俺に言った。
「うん!いきたい!」
それから、俺達はティールームに行って話しをした。ティールームは面会に来てる人や、飲み物を飲んでいる人達がいて、俺達はその一角で一緒に自動販売機で飲み物を買って話しをした。
「ねぇねぇ、永斗?この曲聞いて」
七奈が俺にイヤホンを片方渡してきた。
俺がイヤホンをすると、流れてきたのは人気バンド"NEW WORLD"の曲だった。
「俺好きだよ"NEW WORLD"!」
七奈が嬉しそうな顔をして、俺を見た。
「私もファンなんだ〜この曲が一番好き」
それは、俺はあんまり聞いた事がない曲だった。メジャーな曲ではなくて、アルバムに収録されている、あまり知られていない一曲だった。
「俺、あんまり聞いた事ない曲かも」
「そうなの?『かえりみち』って曲だよ。歌詞も良いんだよね、、、なんかせつなくて」
七奈はそう言って、珍しく何処か寂しそうな顔をした。そこへ、看護師の宮下さんが怒った顔をしてやってきた。
「七奈ちゃん〜!こんな所にいたの?もう!探したんだから!その逃亡癖どうにかして」
宮下さんに怒られて、七奈はあからさまに嫌そうな顔をしていた。
「忘れてたぁ〜、、、検査だったぁ。
あの検査嫌なんだよなぁ、、、。頭痛くなる」
「仕方ないでしょ、ほら!行くよ」
七奈が席を立つと、俺は声をかけた。
「七奈、ほらイヤホン忘れてる。頑張れよ」
「うん、、、」とまた七奈は嫌そうな顔をしていた。そこで、宮下さんが俺にも話しかけてきた。
「永斗君、随分元気そうになったね、入院した時は塞ぎこんで落ち込んでたのに!七奈ちゃんがいて良かったね」と笑った。
「そうそう、絶対治すんだから、私は怒りで病気を退治するの」
「退治するなら。大切な検査嫌がらない!はい!いくよ」
七奈は半分引きずられながら、宮下さんについて行った。
俺は、七奈と話すうちに病気になって落ち込んでいた気持ちが前向きになっていた。
七奈も、自分の病気の事で不安にならない日はなかったと思う。
けれど、怒りという形で彼女は病気と闘っていた。学校へ行かれない怒り、外へ出れない怒り、毎日不安な事への怒り、苦痛な治療に対しての怒り。
その怒りはマイナスな事ではなく、彼女の『絶対に元気になる』と言う前向きなものだった。その前向きな気持ちにつられて、俺もいつしかこの病気を絶対に治したいと思うようになっていた。
お互い入院生活は暇だったし、何より歳の近い人間と話す事がなかったから、七奈と話せる時間は貴重で楽しかった。
俺達は『病気』と言う、共通点があるからか、すぐに距離を縮めていった。
俺は病気の事で気を塞いでいたが、彼女は逆に病気になった事に怒っているようだった。
「何読んでるの?」その日も屋上で本を読んでいると七奈がやってきて聞いてきた。
「親父が持ってきた本だよ。いくら読んでもおもしろくならないんだよ」
俺が七奈に本を渡すと七奈は、その本を見て言った。
「私もこれ読んだよ。あんまり面白くなかった。永斗に私のおすすめの本貸してあげる!私本読むの大好きなの!」
彼女は俺にそう言うと、自分の好きな本を俺に貸してくれた。親父が持ってくる本はつまらなくて全然読み進める事が出来なかったのに、七奈が貸してくれる本は面白くて、すぐに読んでしまった。
「七奈が貸してくれる本、本当に外れがないんだけど。この間貸してくれた本なんてめちゃくちゃ最後までドキドキしたよ」
「面白かった?最後の最後でどんでん返しがあっていいんだよね?書いた人本当に天才だと思う」
俺達がそんな事を話していると、空から雨粒が落ちてきた。もうすぐ梅雨の時期になるのだ。
屋上だと屋根がないから、雨の日は七奈と話せなかった。
俺達は屋上の扉から中へ入ると空を見上げた。
「あーあ、、、雨止まないかなぁ」
七奈が呟いた。俺も残念な気持ちで空を見上げた。俺はもう少し、七奈と一緒にいたくて七奈に言った。
「七奈、ティールームに行こう。もう少し話したい」
七奈は、ぱっと明るい顔になって俺に言った。
「うん!いきたい!」
それから、俺達はティールームに行って話しをした。ティールームは面会に来てる人や、飲み物を飲んでいる人達がいて、俺達はその一角で一緒に自動販売機で飲み物を買って話しをした。
「ねぇねぇ、永斗?この曲聞いて」
七奈が俺にイヤホンを片方渡してきた。
俺がイヤホンをすると、流れてきたのは人気バンド"NEW WORLD"の曲だった。
「俺好きだよ"NEW WORLD"!」
七奈が嬉しそうな顔をして、俺を見た。
「私もファンなんだ〜この曲が一番好き」
それは、俺はあんまり聞いた事がない曲だった。メジャーな曲ではなくて、アルバムに収録されている、あまり知られていない一曲だった。
「俺、あんまり聞いた事ない曲かも」
「そうなの?『かえりみち』って曲だよ。歌詞も良いんだよね、、、なんかせつなくて」
七奈はそう言って、珍しく何処か寂しそうな顔をした。そこへ、看護師の宮下さんが怒った顔をしてやってきた。
「七奈ちゃん〜!こんな所にいたの?もう!探したんだから!その逃亡癖どうにかして」
宮下さんに怒られて、七奈はあからさまに嫌そうな顔をしていた。
「忘れてたぁ〜、、、検査だったぁ。
あの検査嫌なんだよなぁ、、、。頭痛くなる」
「仕方ないでしょ、ほら!行くよ」
七奈が席を立つと、俺は声をかけた。
「七奈、ほらイヤホン忘れてる。頑張れよ」
「うん、、、」とまた七奈は嫌そうな顔をしていた。そこで、宮下さんが俺にも話しかけてきた。
「永斗君、随分元気そうになったね、入院した時は塞ぎこんで落ち込んでたのに!七奈ちゃんがいて良かったね」と笑った。
「そうそう、絶対治すんだから、私は怒りで病気を退治するの」
「退治するなら。大切な検査嫌がらない!はい!いくよ」
七奈は半分引きずられながら、宮下さんについて行った。
俺は、七奈と話すうちに病気になって落ち込んでいた気持ちが前向きになっていた。
七奈も、自分の病気の事で不安にならない日はなかったと思う。
けれど、怒りという形で彼女は病気と闘っていた。学校へ行かれない怒り、外へ出れない怒り、毎日不安な事への怒り、苦痛な治療に対しての怒り。
その怒りはマイナスな事ではなく、彼女の『絶対に元気になる』と言う前向きなものだった。その前向きな気持ちにつられて、俺もいつしかこの病気を絶対に治したいと思うようになっていた。



