****五年前、五月****
とにかく毎日が暇だった。
親父が見つけてきた、脳神経外科に強い東京の病院に入院して、俺はやる事もなくただダラダラと過ごしていた。
小さい時から身体を動かす事が大好きで、三歳から始めた剣道は、あと一歩の所で全国大会までいける所だった。
それなのに─────、、、
全て、俺の頭に出来たおぞましい、悪魔のような奴のせいで全てがぶち壊された。
親父は、俺を不安にさせまいと明るく振る舞って俺を元気づけていた。
一週間に三回も、わざわざ静岡から面会に来てくれて、食べ物やら本やら差し入れを持ってきた。親父が俺を不安にさせないようにしていても、このご時世、少し検索すれば自分の病気があまりよくはない事ぐらいはわかっていた。
その日、俺は病院の屋上に出て、親父が持ってきた本を読んでいた。昔から本を読むより、外で遊ぶ方が好きだったから、全然頭に入ってこないし、つまらなかった。
外は太陽が燦々と降り注ぐ、春の気持ち良い日だった。暖かい風の吹くその日、本を読んでいた俺の頭上に、何か影が通ってそれは真っ逆さまに落ちた。俺はそれを拾うと、折り紙で出来た紙飛行機だった。
不思議に思って辺りを見回すと、紙飛行機がまた落ちてきた。紙飛行機は風にのらずに、真っ逆さまに落ちてきた。
旧棟の高い病室の窓を見ると、俺と変わらないくらいの女の子が、次々と紙飛行機を飛ばしていた。
一体、何個飛ばす気なのかわからないが、彼女は飛行機を飛ばしては首をかしげて大きな声で言った。
「あれ〜おかしいなぁ〜絶対飛ぶはずなのに」
そう言った時、彼女と俺は目が合った。
彼女は、俺に一回頭を下げると病室の窓からいなくなった。
俺は、屋上に落とされた紙飛行機を拾っていると、屋上のドアが開いてさっきの女の子が入ってきた。
髪の毛は肩ぐらいの長さのボブで、小動物を思わせるような可愛らしい子だった。彼女は、紙飛行機を拾っている俺に話しかけてきた。
「ごめんなさい。人がいるの気づかなくて、拾ってくれてありがとう」
彼女はそう言って笑うと、俺から紙飛行機を受け取った。
「凄いね、何個飛ばそうとしてたの?」
「ああ、えーと、、、千個?」
「千個!?」俺が思わず大きな声を出すと、彼女が頷いた。
「そう。千個、千個本当にあるかはわからないけど、千羽鶴って千個だよね?じゃあ千個」
彼女は、高校のクラスメイトから千羽鶴を貰ったが、その千羽鶴が気に入らなかったらしく、全て飛行機に折り直して飛ばしてやろうと思ったらしい。
俺は彼女と屋上のベンチに座りながら、少し話しをした。
「なんか、こう千羽鶴って陰気臭いってうか、不吉なイメージがあるんだよね。皆んなが私の病気治って欲しいっていう、思いは嬉しいけど、自分の病室に千羽鶴があるとこう『私って本当に病人なんだなぁ』って、ひしひしと感じて辛くなるっていうかさ」
彼女の言ってる意味もわからなくなかったが、でもそれを全て紙飛行機に変えてしまうなんて、なかなか突飛な発想だった。
「動画をみながら、めちゃくちゃ飛ぶ紙飛行機を作って飛ばしてたんだけど、全然飛ばなかったね!」
「折り方間違ってるのかも、、、」
俺が動画を見ながら折り直すと、彼女が隣でその様子を見ていた。
「ほら出来た」俺が彼女に、紙飛行機を渡すと彼女は「ありがとう」と言って、俺の作った紙飛行機を飛ばした。
紙飛行機は、真っ直ぐ飛んで下に一旦下がってまた上がって遠くまで飛んだ。
「わぁ〜凄いね!めちゃくちゃ飛ぶね!凄い凄い!」
彼女はそう言ってはしゃいでいた。
その、にこにこしながら、はしゃいでる様子が、俺は何となく気にいって質問した。
「ここに入院してるんでしょ?部屋の位置からして脳神経外科?俺君の上の階の部屋だよ」
「うん!私、瀬川 七奈、高校一年です」
「俺は一ノ瀬 永斗、高校三年です」
俺が名乗ると、彼女は驚いたように言った。
「エイト、、、!?八なんだ!七と八だね!?」
彼女がまた笑うので、俺もつられて笑ってしまった。
「よろしく、永斗!あっ?年上だった!ごめんなさい、永斗、、、さん?」
「いいよ、永斗で。よろしく七奈」
とにかく毎日が暇だった。
親父が見つけてきた、脳神経外科に強い東京の病院に入院して、俺はやる事もなくただダラダラと過ごしていた。
小さい時から身体を動かす事が大好きで、三歳から始めた剣道は、あと一歩の所で全国大会までいける所だった。
それなのに─────、、、
全て、俺の頭に出来たおぞましい、悪魔のような奴のせいで全てがぶち壊された。
親父は、俺を不安にさせまいと明るく振る舞って俺を元気づけていた。
一週間に三回も、わざわざ静岡から面会に来てくれて、食べ物やら本やら差し入れを持ってきた。親父が俺を不安にさせないようにしていても、このご時世、少し検索すれば自分の病気があまりよくはない事ぐらいはわかっていた。
その日、俺は病院の屋上に出て、親父が持ってきた本を読んでいた。昔から本を読むより、外で遊ぶ方が好きだったから、全然頭に入ってこないし、つまらなかった。
外は太陽が燦々と降り注ぐ、春の気持ち良い日だった。暖かい風の吹くその日、本を読んでいた俺の頭上に、何か影が通ってそれは真っ逆さまに落ちた。俺はそれを拾うと、折り紙で出来た紙飛行機だった。
不思議に思って辺りを見回すと、紙飛行機がまた落ちてきた。紙飛行機は風にのらずに、真っ逆さまに落ちてきた。
旧棟の高い病室の窓を見ると、俺と変わらないくらいの女の子が、次々と紙飛行機を飛ばしていた。
一体、何個飛ばす気なのかわからないが、彼女は飛行機を飛ばしては首をかしげて大きな声で言った。
「あれ〜おかしいなぁ〜絶対飛ぶはずなのに」
そう言った時、彼女と俺は目が合った。
彼女は、俺に一回頭を下げると病室の窓からいなくなった。
俺は、屋上に落とされた紙飛行機を拾っていると、屋上のドアが開いてさっきの女の子が入ってきた。
髪の毛は肩ぐらいの長さのボブで、小動物を思わせるような可愛らしい子だった。彼女は、紙飛行機を拾っている俺に話しかけてきた。
「ごめんなさい。人がいるの気づかなくて、拾ってくれてありがとう」
彼女はそう言って笑うと、俺から紙飛行機を受け取った。
「凄いね、何個飛ばそうとしてたの?」
「ああ、えーと、、、千個?」
「千個!?」俺が思わず大きな声を出すと、彼女が頷いた。
「そう。千個、千個本当にあるかはわからないけど、千羽鶴って千個だよね?じゃあ千個」
彼女は、高校のクラスメイトから千羽鶴を貰ったが、その千羽鶴が気に入らなかったらしく、全て飛行機に折り直して飛ばしてやろうと思ったらしい。
俺は彼女と屋上のベンチに座りながら、少し話しをした。
「なんか、こう千羽鶴って陰気臭いってうか、不吉なイメージがあるんだよね。皆んなが私の病気治って欲しいっていう、思いは嬉しいけど、自分の病室に千羽鶴があるとこう『私って本当に病人なんだなぁ』って、ひしひしと感じて辛くなるっていうかさ」
彼女の言ってる意味もわからなくなかったが、でもそれを全て紙飛行機に変えてしまうなんて、なかなか突飛な発想だった。
「動画をみながら、めちゃくちゃ飛ぶ紙飛行機を作って飛ばしてたんだけど、全然飛ばなかったね!」
「折り方間違ってるのかも、、、」
俺が動画を見ながら折り直すと、彼女が隣でその様子を見ていた。
「ほら出来た」俺が彼女に、紙飛行機を渡すと彼女は「ありがとう」と言って、俺の作った紙飛行機を飛ばした。
紙飛行機は、真っ直ぐ飛んで下に一旦下がってまた上がって遠くまで飛んだ。
「わぁ〜凄いね!めちゃくちゃ飛ぶね!凄い凄い!」
彼女はそう言ってはしゃいでいた。
その、にこにこしながら、はしゃいでる様子が、俺は何となく気にいって質問した。
「ここに入院してるんでしょ?部屋の位置からして脳神経外科?俺君の上の階の部屋だよ」
「うん!私、瀬川 七奈、高校一年です」
「俺は一ノ瀬 永斗、高校三年です」
俺が名乗ると、彼女は驚いたように言った。
「エイト、、、!?八なんだ!七と八だね!?」
彼女がまた笑うので、俺もつられて笑ってしまった。
「よろしく、永斗!あっ?年上だった!ごめんなさい、永斗、、、さん?」
「いいよ、永斗で。よろしく七奈」



