僕は待つ、君の頭の片隅で

 「俺、昨日やばかった?」

永斗君が私の部屋の片付けを手伝いながら、言ってきた。

 「やばかった。めちゃくちゃ、やばかった。酒癖悪すぎ、酒乱って感じ」

私の言葉を聞いて、永斗君が青い顔をして、驚いていた。顔が青いのは、多分二日酔いだからだと思う。

 「冗談だよ。まあ、だいぶ酔っ払ってたけど、何にも覚えてないの?」

「覚えてない、、、全く、、、。俺なんか変な事言ってた?」

「う〜ん。変っちゃ変だったけど、最終的に泣いてた」

「は!?マジで?」 永斗君が信じられない顔で私を見る。

 「ごめん、それは本当。強がってるけど、私が帰っちゃうのが寂しいんだねー」

「ええー、、、めっちゃはずいじゃん!!」

永斗君が自分の手で顔を覆っていた。
私は荷物を全て片付けて、初めにきた時の荷物のない多目的室を眺めた。あっという間の夏休みだった。初めてここへ来た時は、お化けが怖すぎて、こんな所では眠れないと思っていたのに、いつのまにか怖くなくなっていた。
 今日も、外には富士山が綺麗に見えていた。この夏休み、ずっと大きな富士山が私達を見守っていてくれた気がした。

 あんなに辛くて、笑う事すらできなかった私が、こんなに変われたのは永斗君のおかげだと思った。

 「永斗君、、、ありがとう」

 永斗君が顔を上げて私を見た。

 「俺のほうこそありがとう、、、」

永斗君が私の手を取って抱きしめた。

 「帰っても、元気で、自分のやりたい事やるんだよ。七奈ちゃんならきっと大丈夫だから」

今日は、いつもの永斗君だった。いつものように私を"七奈ちゃん"と呼ぶ。

 「ねえ、帰っても寂しかったら電話していい?」

 「いいよ」

「会いにきてもいい?」

「、、、いいよ、、、」

永斗君の私を抱きしめる力が強くなって、私は苦しいくらいだった。

 「七奈ちゃんは、ラッキーセブンに恵まれている人生だから、大丈夫だよ。どんな時でも信じて生きていくんだよ」

「永斗君も、ラッキーエイトだからね」

 私達は、なかなか離れられなかった。
これで最後なわけじゃないのに、私は永斗君と離れる事が出来なかった。
、、、けれど、キャンプ場に母の車が入ってきて、私たちは離れざるえなかった。
私は、それでも名残惜しくてなかなか永斗君から離れられなかったが、永斗君が私の手を握って言った。

 「さっ、七奈ちゃん。もう時間だよ」

 その声を合図に、私達は部屋を出た。なんだか新たな一歩を踏み出すような、そんな気分で私はいた。
 車に荷物を積むと、母が、岸さんと永斗君にお礼を言った。

 「本当にお世話になりました。ありがとうございました」

母が深々と頭を下げて、私達は車に乗った。

 「元気でね、、、」 「七奈ちゃんもな」

 私はいつまでも、手を振った。
永斗君が小さくなって見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。永斗君の笑った顔を思い浮かべながら────、、、。