私が受付に戻ると、永斗君が受付で小さな男の子と紙ヒコーキを折っていた。

 「えいと君さ、何回も言ってるのに、なんで折り方すぐ忘れちゃうの?」

男の子が、永斗君に怖い顔をして怒っていた。

 「いやぁ、おかしいなぁ。なんかユイ君の飛行機むずくね?複雑なんだよなぁ」

永斗君が一人でぶちぶち言いながら、折り紙と格闘していた。

「これが一番飛ぶの!!」

「あー、はいはい!すみません!」

永斗君が平謝りしているのが面白かった。

 「七奈ちゃん、お帰り!ちょっと変わって!俺折り紙苦手なんだよ」

私は永斗君の顔を見て安心した。

 「いいよ〜お姉さんは折り紙得意だよ」

私はそう言って永斗君の代わりに飛行機を折った。

「お姉ちゃんのよく飛ぶ?」

「飛ぶ飛ぶ!めっちゃ飛ぶ!一回登って、下がってまた上がる」

私とユイ君で飛行機の飛ばし合いっこをする事になった。私は飛行機を折るのが得意だったので、遠くへ飛ばす自信があった。

 私とユイ君で校舎の二階へ行って飛行機を飛ばす事にした。下にいる永斗君にどっちが遠くまで飛ばせたかジャッジしてもらう事にした。

 私はユイ君と目を合わせて『いっせーのーせ!!』と言って同時に飛行機を飛ばした。

 ユイ君の飛行機は心地よい風に乗って飛んで行った。
私の飛行機は、上手く風に乗るはずが何故か一直線に下へ落ちてしまった。
 下にいる永斗君が飛行機のいく先を眺めて、私の飛行機が落下すると、私の顔を見た。

 「えぇ〜なんで〜!!絶対飛ぶはずなのに!」

私が思わず叫ぶと永斗君が驚いた顔をして私を見た。

 「やった!!俺の勝ち!!」ユイ君が隣りでガッツポーズをしていた。

 「えいと君!俺の紙ヒコーキ取って!」

ユイ君に言われて、慌てて永斗君がユイ君の紙ヒコーキを取りに行った。

 「じゃあ、おめでとうございます。ユイ君の勝ちです。こちらプレゼントになります」

永斗君が、ユイ君にお菓子の詰め合わせをあげると、ユイ君は喜んでサイトへ帰っていった。

 「おかしいなぁ、、、。あの折り方で長く飛ぶはずなのになぁ」

「七奈ちゃん、きっと折り方間違えてるよ」

「そうなのかなぁ。後でまた動画見て勉強しよう!」

私が一人で紙飛行機を見て悩んでいると、永斗君が私に向かって言ってきた。

 「七奈ちゃん、彼氏とは話せたの?」

私は「、、、うん。まあ、、、」と曖昧に返事をした。

「変わろうとしてるんじゃない?彼氏。七奈ちゃんの為に」

「そう言ってた。変わってまた私と向き合いたいって」

「良かったじゃん。確かに彼氏は間違えたけど、やり直すチャンスが一度くらいあってもいいんじゃない?」

「良かった、、、うん。まあ、、、」

 永斗君は、私が翔也とまた恋人に戻っても何とも思わないんだろう。むしろ祝福してくれそうだ、、、。

 「私、高校生の時に病気になったって言ったでしょ?その時、死ぬかもしれないって言われてさ、私、毎日怖くて。
 でも絶対に死にたくないって、生きたいって思ってて、、、。翔也が私に言ってくれた。
『七奈は絶対に死なないから、一生懸命生きる事を考えよう』って『明日一緒に何をするか考えよう』って」

それから毎日、明日は何をするか二人で考えた。それは小さな事だった。一緒に好きな本を読むとか、映画を見るとか、お互いの好きな所を十個あげるとか、そんな小さな事だった。
でも、そんな小さな事が私の生きる希望だった。

「あとね、外泊できる日があって、二人で制服でデートもしたの。殆ど入院してて、高校の制服着れてなくて、それがずっと寂しくて、一度でいいから、二人で制服デートしたくてね。わざわざ二人で制服着てデートをしたの。手術のせいか、あの頃の記憶がぼやけてるんだけど、その時の事はよく覚えてるんだ。凄く幸せだったから、、、翔也がいたから頑張れた」

 あの苦しい闘病生活を乗り越えられたのは、間違いなく翔也のおかげだった。

 「、、、そうなんだね。そんな大切な人なら、大事にしなくちゃ」

永斗君が少し笑っていうと「ごめん!俺ちょっとトイレ行ってくる!」と言ってトイレに行ってしまった。
 私は一人考えた、翔也も永斗君も私の人生を救ってくれた。二人とも、私にとって大切な人に代わりはない。けれど私の心は既に決まっていた。