「え?しょう、、、翔也!?」
私は翔也がこんな所にいる事に、ただただ驚いた。翔也は私をきつく抱きしめると「ずっと会いたかった」と私に言った。翔也の懐かしい腕と匂いに私は頭がおかしくなりそうだった。
けれど、私はすぐに翔也を自分の身体から離して言った。
「翔也?ちょっと待って、何でここにいるの?」
「ここまでこなきゃ、一方的に別れを告げて話してもくれなかっただろ?」
確かに翔也の言う通りだった。私は翔也とはもう、話さずに別れるつもりだった。
「俺は納得してないから」
そう言って、真っ直ぐ私を見る翔也は少し痩せたようにみえた。
「七奈ちゃん、、、お客さんでしょ?部屋で二人で話してきたら?」
永斗君が私に声をかけて、私から斧を取った。
翔也が永斗君に頭を下げると、永斗君が「ごゆっくり」と笑って言った。
私と翔也は、私の部屋に行って話しをした。
二人でベッドに座ると。私達の気まずい空気を少し涼しくなった夕方の風がかき消していった。
外では、ひぐらしが鳴いていて何処か物悲しかった。
「びっくりした、まさか七奈が自殺未遂なんてすると思わなくて、、、」
翔也がはじめに口を開いた。いつの間にか大人びた翔也の横顔を見て、まるで知らない人みたいに見えた。
「うん、、、なんかごめんね。タイミング的に翔也のせいであんな事したように思えて、気にしてたよね?」
「、、、っていうか、俺が原因の一つでも確実にあるでしょ?」
それは否定できなかったが、けれどそれが全てではない。翔也の浮気現場を見る前から、私はずっと空っぽの自分に押しつぶされて、死にたいと思っていた。
「あの子は同じ会社の子?」
私は翔也とキスをしていた、可愛い女の子の顔を思い出していた。あの時、私が憧れていた、安定した会社に就職して、可愛いピンクのパンプスを履いている女の子だった。
「同じ会社の同期の子なんだ、、、。入社した時から飲み会とかで仲良くなって、そのうちに告白された」
「そうだったんだね、、、」
私は今、そんな話しを聞いても遠い現実のような気がしてならなかった。
「俺さ、入社してから結構切羽詰まってて、研修も何もかも、周りが凄過ぎてついてくのがやっとでさ、、、情けないよな。せっかく自分がずっと入りたい会社に入ったのに、入ってみたらきつくてしんどくてさ、、、いっぱいいっぱいだった」
翔也のそんな話しは、初めて聞く話しだった。
翔也は就職しても、生き生きとして、楽しく働いているものだと思っていた。
「そんな事、私には全然言ってなかったよね?」
「七奈が就活で行き詰まってるの知ってたし、愚痴れなかった、、、ってかカッコ悪くて言えなかった」
「どうして、、、言ってよ」
「でも、七奈も言ってくれなかっただろ?死ぬほど苦しいって、俺には言ってくれなかっただろ?」
翔也に言われて、私は気づいた。翔也に甘える事は出来なかった。弱さを見せたら、何でも完璧な翔也に釣り合わない気がしていた。
昔からクラスの中心で、勉強もスポーツも何でも出来て、自分の意見をはっきり言えて、そんな翔也みたいな人間に私はならなくちゃいけないと思っていた。
「七奈、俺変わりたいんだ。周りにいいとこばっかり見せて、弱音をはけない自分を変えたい。
あの日、あの子に優しくされてつい心が傾いたのは事実だよ。あのまま七奈がこなければ、きっと、俺は朝まであの子と一緒にいたよ。
結局俺は、七奈がいつも言っているような完璧な人間じゃなくて、ただの弱い情けない男だよ」
翔也が私の手を取った。その顔は、いつも自信に溢れた翔也の顔ではなかった。
「、、、だからこそ、これからは、本当の自分で七奈と向き合いたい。あんな事しておいて、俺の事、もう信じられないと思うけど。俺はやっぱり七奈が好きなんだ、、、小学生の時からこの気持ちは変わらない。だからやり直したい」
胸が苦しかった、、、。翔也の事が好きだった気持ちに嘘はない。ずっと大切だった。
このまま戻れば幸せになれる気もした。きっと翔也は今まで以上に、私を大切にしてくれる。
けれど、、、頭の中で父の言葉が繰り返された。
『自分の心が動く方を選択していくんだ』
私は翔也がこんな所にいる事に、ただただ驚いた。翔也は私をきつく抱きしめると「ずっと会いたかった」と私に言った。翔也の懐かしい腕と匂いに私は頭がおかしくなりそうだった。
けれど、私はすぐに翔也を自分の身体から離して言った。
「翔也?ちょっと待って、何でここにいるの?」
「ここまでこなきゃ、一方的に別れを告げて話してもくれなかっただろ?」
確かに翔也の言う通りだった。私は翔也とはもう、話さずに別れるつもりだった。
「俺は納得してないから」
そう言って、真っ直ぐ私を見る翔也は少し痩せたようにみえた。
「七奈ちゃん、、、お客さんでしょ?部屋で二人で話してきたら?」
永斗君が私に声をかけて、私から斧を取った。
翔也が永斗君に頭を下げると、永斗君が「ごゆっくり」と笑って言った。
私と翔也は、私の部屋に行って話しをした。
二人でベッドに座ると。私達の気まずい空気を少し涼しくなった夕方の風がかき消していった。
外では、ひぐらしが鳴いていて何処か物悲しかった。
「びっくりした、まさか七奈が自殺未遂なんてすると思わなくて、、、」
翔也がはじめに口を開いた。いつの間にか大人びた翔也の横顔を見て、まるで知らない人みたいに見えた。
「うん、、、なんかごめんね。タイミング的に翔也のせいであんな事したように思えて、気にしてたよね?」
「、、、っていうか、俺が原因の一つでも確実にあるでしょ?」
それは否定できなかったが、けれどそれが全てではない。翔也の浮気現場を見る前から、私はずっと空っぽの自分に押しつぶされて、死にたいと思っていた。
「あの子は同じ会社の子?」
私は翔也とキスをしていた、可愛い女の子の顔を思い出していた。あの時、私が憧れていた、安定した会社に就職して、可愛いピンクのパンプスを履いている女の子だった。
「同じ会社の同期の子なんだ、、、。入社した時から飲み会とかで仲良くなって、そのうちに告白された」
「そうだったんだね、、、」
私は今、そんな話しを聞いても遠い現実のような気がしてならなかった。
「俺さ、入社してから結構切羽詰まってて、研修も何もかも、周りが凄過ぎてついてくのがやっとでさ、、、情けないよな。せっかく自分がずっと入りたい会社に入ったのに、入ってみたらきつくてしんどくてさ、、、いっぱいいっぱいだった」
翔也のそんな話しは、初めて聞く話しだった。
翔也は就職しても、生き生きとして、楽しく働いているものだと思っていた。
「そんな事、私には全然言ってなかったよね?」
「七奈が就活で行き詰まってるの知ってたし、愚痴れなかった、、、ってかカッコ悪くて言えなかった」
「どうして、、、言ってよ」
「でも、七奈も言ってくれなかっただろ?死ぬほど苦しいって、俺には言ってくれなかっただろ?」
翔也に言われて、私は気づいた。翔也に甘える事は出来なかった。弱さを見せたら、何でも完璧な翔也に釣り合わない気がしていた。
昔からクラスの中心で、勉強もスポーツも何でも出来て、自分の意見をはっきり言えて、そんな翔也みたいな人間に私はならなくちゃいけないと思っていた。
「七奈、俺変わりたいんだ。周りにいいとこばっかり見せて、弱音をはけない自分を変えたい。
あの日、あの子に優しくされてつい心が傾いたのは事実だよ。あのまま七奈がこなければ、きっと、俺は朝まであの子と一緒にいたよ。
結局俺は、七奈がいつも言っているような完璧な人間じゃなくて、ただの弱い情けない男だよ」
翔也が私の手を取った。その顔は、いつも自信に溢れた翔也の顔ではなかった。
「、、、だからこそ、これからは、本当の自分で七奈と向き合いたい。あんな事しておいて、俺の事、もう信じられないと思うけど。俺はやっぱり七奈が好きなんだ、、、小学生の時からこの気持ちは変わらない。だからやり直したい」
胸が苦しかった、、、。翔也の事が好きだった気持ちに嘘はない。ずっと大切だった。
このまま戻れば幸せになれる気もした。きっと翔也は今まで以上に、私を大切にしてくれる。
けれど、、、頭の中で父の言葉が繰り返された。
『自分の心が動く方を選択していくんだ』



