永斗君と一緒にいると幸せだったけど、苦しかった。私は絶対に好きになっても意味のない人を好きになってしまった。
 気持ちはどんどん膨れていくのに、それを伝える事も諦める事も出来なくて、ただ歯痒かった。
 好きになればなるほど、永斗君を独占したくて、私を見て欲しくて、永斗君が私のモノになって欲しくて、欲張りになっていった。
夏休みが終わってしまったら、終わる関係だとわかっているけれど、それでも私は永斗君の事が好きだった、、、。

 「すみません、、、コンセントってお借りできますか?」

私が受付にいると、メガネをかけた若い男の人がパソコンをかかえてやってきた。

 「コンセントですか、、、あっ、こちらにどうぞ」

私はそう言って、図書室に案内した。図書室は空調も効いているし、テーブルにコンセントがあったので、充電も可能だった。

 「ありがとうございます!助かります!ちょっと急用の仕事でパソコンを使わなくちゃいけないのに、充電ないし、モバイルバッテリーをすっかり忘れてしまって、、、」

 「そうだったんですね。あっちょっと待ってくださいね」

私は、自分のパソコンを繋いでいたので片付けて場所を開けた。

 「あの、こちらのキャンプ場のホームページで、ブログを書いてらっしゃる七奈さんですか?」

その男性が、いきなり私に聞いてきたので少し驚いた。

 「はい、そうです。読んでくださったんですか?」

「はい。予約する時にキャンプ場の事が知りたくて読ませてもらいました。凄く面白かったです」

 私は、単純に自分の書いた文章を読んでもらえて嬉しかった。

「ありがとうございます。そう言って頂けると凄く嬉しいです」

「ブログだけど、物語風で少し笑えてなんかほっとする文章ですよね。風景の描写も美しくて、登場人物のキャラもたっていて面白いし」

 そんなに細かく感想を言ってもらえて、私は少し驚いたが、そこまで読み込んでもらえてありがたかった。

 「ああ、すみません。つい仕事のくせで文章の批評をしてしまうんです。活字中毒な所があって」

「いえ、、、嬉しいです。私の素人の文にそこまで感想を言ってもらえて」

彼は、パソコンを繋げて画面を開いた。
私は見るつもりはなかったが、画面いっぱいに映し出されたカラーの漫画の絵が綺麗で、思わず声に出してしまった。

 「うわぁ!綺麗ですね!」

「はい、綺麗でしょう?携帯で縦読みのWEB漫画は読みますか?」

 (WEB漫画、、、?)

「すみません。私、読書は好きなんですが、漫画自体はあまり読まなくて、、、しかも、本は紙派で、、、」

私が正直に話すと、彼は楽しそうに笑った。

「私も同じです。どちらかと言うと、古典的なミステリー小説が好きで出版社で働いていました」

「そうなんですか?だからさっき活字中毒とおっしゃっていたんですね」

「その通りです。ずっと雑誌の編集をしてました」

「凄いですね、私は出版社を受けましたけど、軒並み落ちちゃいました」

「そうですか、、、出版社は何処も狭き門ですからね、どんな本が好きなんですか?」

「私は、何でも読みますが児童文学が特に好きです。ファンタジーが好きなのかもしれません」

彼は自分を西海(にしかい)と名乗った。
その後、お互いに好きな小説の話しで少し盛り上がった。
 私は、出版社には落ちてしまったが、今自分で物語を書いている話しをした。西海さんは、私の話しに興味を持ち、簡単なあらすじでいいから教えてくれと言ってきた。

 「一応プロット的なのは、書いたんですけど、、、それで良ければ読んでもらえますか?」

私は、こんなプロの人に読んでもらえる事はそうそうないので、せっかくだったら良いか、悪いか見てほしかった。
もちろん、恥ずかしい思いもあるし、不安だけれどこんなチャンスはないと思った。

 私は自分のノートパソコンを渡すと、西海さんは、少し驚いていた。

 「こんなに沢山プロットを書いたんですね」

「どんな話しを書くか、迷ってしまって、思いつくまま何個か書きました。最終的にこの話しに決めたんですが」

西海さんは、もの凄いスピードで私の書いた、物語の大まかなあらすじの、プロットを読んだ。私は西海さんが読むのを待つ間、凄く緊張して喉の当たりが息ぐるしかったが、恐る恐る聞いてみた「どうです?」
 西海さんは、私にパソコンを渡してにっこり笑った。

 「面白い話しですね。打ち上げ花火が上がる度に時代が変わるっていう、けれど結局全て話しがバトンのように渡されて繋がっていく、、、。これは、書き上げたらコンテストへ出すんですか?」

「いいえ、ただ趣味で書いてみたいだけなんで何かに出すつもりはないです」

「そうですか、、、」

「あっ、すみません。お仕事の邪魔をしてしまって、ここ自由に使っていいんで」

「他のプロットも読ませて頂いてよろしいですか?」

「もちろん、良いですよ。逆にありがとうございます。こんな素人のプロットを読んで頂いて、、、」

私がそう言って、出て行こうとしたら西海さんが私を呼び止めた。

「あの、漫画は読まないとおっしゃいましたが、ちょっと薦めたい漫画があるんです」

「、、、はい?」

「このWEB漫画、すぐ読めると思うので、読んでみてもらえませんか?私が手がけた漫画です」

「西海さんが?」

「はい。私WEB漫画の編集をしているんですよ。良かったら読んでください」

 西海さんは私に向かって微笑んだ。