「今さら、あなたに父親だと名乗っていいものかわからず、僕はなかなかいい出せませんでした。だって、最後にちゃんと会ったのは七奈さんがまだ二歳の時だったから」
そうだ、、、母と父が離婚したのは私が二歳の時で、それから私は一度も父に会った事はなかった。
「昔、母から父の書いた記事の雑誌を見せてもらった事がありました。でも、名前が"田中"ではなかったような、、、」
「田中は偽名です。本名は金山 大樹です」
「随分安易な偽名を使いましたね」
私は思わず笑ってしまった。
「七奈さんは、僕を恨んでいたでしょう。
家族を捨てて、わけのわからない国に行って取材にあけくれている、、、父親としても、夫としても失格の最低な人間だ」
そう言ってうつむく田中さんに、私は近づいた。
「私は、田中さんがお父さんだったらいいなぁって、思っていました。田中さんじゃないか、、、金山さんか。
その前から、金山さんの取材の記事を読んで、命がけで紛争地域の現状を伝えるあなたをかっこいいと思っていました。私の父親は誇らしい仕事をしている人なんだって」
田中さんは少し目に涙を浮かべていた。あんなに落ち着いて、冷静な田中さんが感情的になるなんて少し信じられなかった。
「信じてもらえないかもしれないけれど、お母さんの事も七奈の事も愛していた。
けれど、僕は平凡で幸せな生活に身を置く事がどうしても出来なかった。飢えや戦争で苦しむ人間を見る度に、この現状をどうしても訴えて伝えたかった。自分の命が亡くなろうとも、それが自分の使命のように感じて、止める事が出来なかったんだ。
、、、だから、お母さんの事も愛していたが捨てた。お母さんには別の、、、普通の人と一緒になって欲しかった。僕はお母さんをとにかく苦しめる事しか出来なかった」
「私と、お母さんの事愛してたの、、、?」
私がずっと聞きたかったのは、それだけだっ
た。
『父は私の事をどんな風に思っていたの?』
「ああ、愛していた。ずっと会いたいと思っていた。七奈が病気になったと聞いた時、いてもたってもいられなくて、病院まで行ったがどうしても名乗る事が出来なかった。
父親らしい事なんて何もしてこなかったのに、今更何て名乗ればいいのわからなかった。それにお母さんも、今更俺が七奈の前に現れる事を心配していたしね」
私はどんどん視界が涙でぼやけてきた。
だって、私はずっと父に愛されていたいと願って生きてきた。少しだけ希望を持ちながら、会った事もない、記憶にもない父親に勝手に期待をしていた。
「七奈、、、すまなかった。
身勝手な事ばかりをして傷つけて、、、。」
「だけど、、、ありがとう。生きててくれてありがとう。よく頑張って生きてきたな、、、頑張ったな、、、」
父がそう言って泣きながら私を抱きしめた。
父は完璧な人間ではないかもしれない。確かに母にとったらいい夫ではなかったかもしれない。
けれど、私が今感じている父の愛情に嘘はないと思った。私は確かに父に愛されて生きていた。
それ以上何も望む事はなかった。ただ、こんなにかっこいい父親がいて、私は最高にラッキーだと思った。
そうだ、、、母と父が離婚したのは私が二歳の時で、それから私は一度も父に会った事はなかった。
「昔、母から父の書いた記事の雑誌を見せてもらった事がありました。でも、名前が"田中"ではなかったような、、、」
「田中は偽名です。本名は金山 大樹です」
「随分安易な偽名を使いましたね」
私は思わず笑ってしまった。
「七奈さんは、僕を恨んでいたでしょう。
家族を捨てて、わけのわからない国に行って取材にあけくれている、、、父親としても、夫としても失格の最低な人間だ」
そう言ってうつむく田中さんに、私は近づいた。
「私は、田中さんがお父さんだったらいいなぁって、思っていました。田中さんじゃないか、、、金山さんか。
その前から、金山さんの取材の記事を読んで、命がけで紛争地域の現状を伝えるあなたをかっこいいと思っていました。私の父親は誇らしい仕事をしている人なんだって」
田中さんは少し目に涙を浮かべていた。あんなに落ち着いて、冷静な田中さんが感情的になるなんて少し信じられなかった。
「信じてもらえないかもしれないけれど、お母さんの事も七奈の事も愛していた。
けれど、僕は平凡で幸せな生活に身を置く事がどうしても出来なかった。飢えや戦争で苦しむ人間を見る度に、この現状をどうしても訴えて伝えたかった。自分の命が亡くなろうとも、それが自分の使命のように感じて、止める事が出来なかったんだ。
、、、だから、お母さんの事も愛していたが捨てた。お母さんには別の、、、普通の人と一緒になって欲しかった。僕はお母さんをとにかく苦しめる事しか出来なかった」
「私と、お母さんの事愛してたの、、、?」
私がずっと聞きたかったのは、それだけだっ
た。
『父は私の事をどんな風に思っていたの?』
「ああ、愛していた。ずっと会いたいと思っていた。七奈が病気になったと聞いた時、いてもたってもいられなくて、病院まで行ったがどうしても名乗る事が出来なかった。
父親らしい事なんて何もしてこなかったのに、今更何て名乗ればいいのわからなかった。それにお母さんも、今更俺が七奈の前に現れる事を心配していたしね」
私はどんどん視界が涙でぼやけてきた。
だって、私はずっと父に愛されていたいと願って生きてきた。少しだけ希望を持ちながら、会った事もない、記憶にもない父親に勝手に期待をしていた。
「七奈、、、すまなかった。
身勝手な事ばかりをして傷つけて、、、。」
「だけど、、、ありがとう。生きててくれてありがとう。よく頑張って生きてきたな、、、頑張ったな、、、」
父がそう言って泣きながら私を抱きしめた。
父は完璧な人間ではないかもしれない。確かに母にとったらいい夫ではなかったかもしれない。
けれど、私が今感じている父の愛情に嘘はないと思った。私は確かに父に愛されて生きていた。
それ以上何も望む事はなかった。ただ、こんなにかっこいい父親がいて、私は最高にラッキーだと思った。



