次の日、仕事の終わった私は、田中さんのバイクに乗せてもらった。キャンプ場を出る時に永斗君も見送りに来た。
田中さんは、自分の黒いヘルメットを被って、もう一つ、白いヘルメットを取り出してきた。
「それ、わざわざ買ってくれたんですか?」
私が驚いて聞くと、田中さんがバイクの座席に白いヘルメットを置いて言った。
「七奈さん用に買いました。ピカピカの新品です」
田中さんは、そう言うとヘルメットに向かって手を合わせて一礼した──────
私はその姿を見て、心臓がドクッと波打った。直ぐに永斗君の顔を見ると、永斗君も驚いた顔をしていたが、私を見て頷くと何も言わなかった。
「七奈さん」田中さんは、私達が驚いている事も知らずに、私にヘルメットを被らせてくれた。
田中さんは、私をバイクの後ろに座らせると「危ないからちゃんと掴まっててくださいね」
と言った。
私は田中さんの背中にギュッと強く掴まった。
「いってらっしゃい!七奈ちゃん!楽しんできてねー!!」
永斗君が叫んでいたが、私は何も言えなかった。胸騒ぎと、胸の苦しさで声がだせなかった。
信じられないくらいに、ドキドキしていた。
田中さんの背中に抱きつき、田中さんの体温を感じると涙が出そうになった。
初めてのバイクは私が思っていたよりもスピードがあったし、風も強かったし、エンジンの音は迫力があった、正直に言うと少し怖かった。けれど、田中さんの背中に掴まっていると、少しも怖さは感じなかった。
それよりも田中さんへの絶対的な信頼感があった。
しばらく山道をバイクで走っていくと、田中さんは見晴らしのいい展望台でバイクを停めた。
私と田中さんはヘルメットを外すと、展望台から景色を眺めた。丁度富士山が夕陽で赤く染められていた。
「怖くなかった?」田中さんが私に聞いてきた。
「怖かった。思ったより迫力が凄くて、飛ばされるんじゃないかと思いました」
私が素直な感想を言うと、田中さんが少し笑った。
「実際に乗ってみると全然違うでしょ?体験しないとわからない事だらけだよ」
私と田中さんは日が落ちていく富士山を二人で見つめていた。私はどうしても田中さんに聞きたかった。
富士山を見つめる田中さんの横顔は寂しげで、けれどやっぱり雰囲気があってかっこよかった。
お母さんも、この横顔を愛したのだろうか、、、。
「田中さん、勘違いかもしれないんですけど」
私がそう切り出すと、田中さんは私の顔を見つめた。
「これは私のただの希望なんですが、、、田中さんは、私の父親ですか?」
聞いてから途端に緊張して手が震えてきた。
別に確証は何もない。田中さんと私が似ているかと聞かれたら、似ているような気もするし、違う気もする。お母さんがやっていた儀式を田中さんもやっていたからといって、そんなの偶然かもしれない。
、、、けれど、私は何か田中さんに感じるものがあった。
田中さんは一瞬驚いた表情をしたが、直ぐに真剣な顔になった。
「私は、、、あなたの父親です」
自分で聞いておきながら、目の前にいる人が自分と血のつながりのある父親だという事に、信じられない気持ちになった。
本当に田中さんが、私の父親だったんだ、、、。
田中さんは悲しげな瞳で私を見ると静かに話しだした。
田中さんは、自分の黒いヘルメットを被って、もう一つ、白いヘルメットを取り出してきた。
「それ、わざわざ買ってくれたんですか?」
私が驚いて聞くと、田中さんがバイクの座席に白いヘルメットを置いて言った。
「七奈さん用に買いました。ピカピカの新品です」
田中さんは、そう言うとヘルメットに向かって手を合わせて一礼した──────
私はその姿を見て、心臓がドクッと波打った。直ぐに永斗君の顔を見ると、永斗君も驚いた顔をしていたが、私を見て頷くと何も言わなかった。
「七奈さん」田中さんは、私達が驚いている事も知らずに、私にヘルメットを被らせてくれた。
田中さんは、私をバイクの後ろに座らせると「危ないからちゃんと掴まっててくださいね」
と言った。
私は田中さんの背中にギュッと強く掴まった。
「いってらっしゃい!七奈ちゃん!楽しんできてねー!!」
永斗君が叫んでいたが、私は何も言えなかった。胸騒ぎと、胸の苦しさで声がだせなかった。
信じられないくらいに、ドキドキしていた。
田中さんの背中に抱きつき、田中さんの体温を感じると涙が出そうになった。
初めてのバイクは私が思っていたよりもスピードがあったし、風も強かったし、エンジンの音は迫力があった、正直に言うと少し怖かった。けれど、田中さんの背中に掴まっていると、少しも怖さは感じなかった。
それよりも田中さんへの絶対的な信頼感があった。
しばらく山道をバイクで走っていくと、田中さんは見晴らしのいい展望台でバイクを停めた。
私と田中さんはヘルメットを外すと、展望台から景色を眺めた。丁度富士山が夕陽で赤く染められていた。
「怖くなかった?」田中さんが私に聞いてきた。
「怖かった。思ったより迫力が凄くて、飛ばされるんじゃないかと思いました」
私が素直な感想を言うと、田中さんが少し笑った。
「実際に乗ってみると全然違うでしょ?体験しないとわからない事だらけだよ」
私と田中さんは日が落ちていく富士山を二人で見つめていた。私はどうしても田中さんに聞きたかった。
富士山を見つめる田中さんの横顔は寂しげで、けれどやっぱり雰囲気があってかっこよかった。
お母さんも、この横顔を愛したのだろうか、、、。
「田中さん、勘違いかもしれないんですけど」
私がそう切り出すと、田中さんは私の顔を見つめた。
「これは私のただの希望なんですが、、、田中さんは、私の父親ですか?」
聞いてから途端に緊張して手が震えてきた。
別に確証は何もない。田中さんと私が似ているかと聞かれたら、似ているような気もするし、違う気もする。お母さんがやっていた儀式を田中さんもやっていたからといって、そんなの偶然かもしれない。
、、、けれど、私は何か田中さんに感じるものがあった。
田中さんは一瞬驚いた表情をしたが、直ぐに真剣な顔になった。
「私は、、、あなたの父親です」
自分で聞いておきながら、目の前にいる人が自分と血のつながりのある父親だという事に、信じられない気持ちになった。
本当に田中さんが、私の父親だったんだ、、、。
田中さんは悲しげな瞳で私を見ると静かに話しだした。



